<サッカー:日本2-0中国・女子W杯予選兼アジア杯>◇30日◇3位決定戦◇中国・四川省成都

 エース沢穂希(31=ワシントン)が、日本女子代表を6大会連続のW杯に導いた。負ければ初の予選敗退が決まる中国戦、1-0で迎えた後半17分にMF宮間あや(25)のFKを頭で合わせてゴール。男子の釜本邦茂に並ぶ国際Aマッチ通算75点目で、チームに勝利をもたらした。沢を中心に、なでしこジャパンは11年6月のW杯ドイツ大会で頂点を目指す。

 沢の目が涙でにじんだ。第1回大会から続くW杯出場。伝統を守った安堵(あんど)からか、何度も指で目頭を押さえた。「負けたら後がないプレッシャーとの戦いで、ホッとした」。チームメートと抱き合って喜びを爆発させると、今度は笑いながら話した。

 1点リードの後半17分、宮間のFKに合わせて倒れながらバックヘッド。ボールがゴールに飛び込むと、両こぶしを何度も握りしめた。釜本と並ぶ国際Aマッチ通算75得点。「並んだのはうれしい。大事な試合だったし」。03年女子W杯などで日本選手団長を務めた釜本氏。海外で「世界のカマモト」を実感していたからこそ、タイ記録を喜んだ。

 もちろん、男女の違いもあるから単純比較には意味がない。それでも「釜本さんを抜くまで、やめられない」と執念をみせるのは、女子サッカーの地位向上のためだ。代表として戦ってきたのは、156試合の相手だけではない。男子に比べて恵まれない環境の改善も、戦いだった。女子サッカーの象徴として長い間活躍してきたからこそ「女子サッカーのために」という思いは誰よりも強い。

 男子W杯の陰で、女子も必死に戦っていることを示したかった。佐々木監督の「精神力で戦おう」という言葉通り、沢は試合前から気合が入っていた。豊富な運動量と確かな技術で、ボランチの位置からチームを引っ張った。バー直撃のヘッドで先制点を導き、ピンチには自陣深く戻って体を張った。大声で若手を鼓舞し続けた。「準決勝は力を出し切った感じがしなかったけど、今日は全員が出し切った」と満足そうに言った。

 北京五輪で4位に入った女子日本代表は、次の目標に「世界制覇」を掲げる。「まだ世界のトップ3(米国、ドイツ、ブラジル)とは差がある」と冷静だ。一方で「この大会で若手が修羅場をくぐった。この経験がW杯につながるはず」と熱い思いも口にした。W杯での好成績の先に女子サッカーの未来があることを、沢は分かっている。【江橋儀典通信員】