<親善試合:韓国0-0日本>◇12日◇ソウル

 【ソウル12日】日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(57)が、初めてアジアのチームと対戦し、厳しい現実に直面した。トップレベルの韓国と対戦し、アウェーで0-0で引き分けた。サイド攻撃を得意とする韓国代表のお株を奪う右サイド攻撃でチャンスはつくったが無得点に終わった。3トップ中央のFW前田遼一(29=磐田)はシュート0とゴールは遠かった。決定力不足という日本代表の長年の課題を残したまま、ザックジャパンは年内最終戦を終えた。

 試合前のロッカールームで、ザッケローニ監督が語気を強めた。「ホームで、東京でやるのと変わらないようにやれ!」。6万2503人がスタンドを真っ赤に染めた韓国の首都・ソウルW杯スタジアム。相手サポーター席の前には「歴史を忘れた民族に未来はない」と書かれた挑発的な横断幕が掛けられた完全アウェーの地で、百戦錬磨の指揮官は、気持ちで負けるなと熱弁をふるった。

 「今日はできた面とできなかった面があった」。試合後の会見で、できなかった点に関しては具体的なことは明かさなかったが、できた点に関しては選手個人名を挙げながら、満足そうに話した。特にビデオで研究し、相手がサイド攻撃を得意とすることは熟知した上で、そのすきを突いたことを高く評価した。

 ザッケローニ監督

 うまくいった時はサイドチェンジしてサイドからいい攻撃ができた。右から多くのチャンスが生まれた。松井と内田がうまくスペースを突いた。日本がサイドにできるスペースを突いた時には、どのチームにとっても、かなり怖い存在になると思う。

 アジアの強国相手に右サイド攻撃に手応えはつかんだが、それを得点に結びつけられないのは今の日本の実力だ。前半は右から何度もクロスが上がったが、中央で構える前田の頭には届かなかった。結局、ゴールから最も近い位置でプレーした前田はシュート0本に終わり「それが今の僕の実力です」と肩を落とした。

 「最後の最後、相手のセットプレーが怖かったので、前田は力になってくれると思ったから」と、秘蔵っ子と思われていた森本を最後まで試せなかった。右サイドからチャンスは作ったが、4日からの合宿で口酸っぱく言っていた「もっと手数を減らして相手ゴールに迫っていけ」の言葉をピッチ上で実現させることもできなかった。

 韓国戦で、今年のAマッチは終了した。来年1月のアジア杯まで、もう実戦で試すことはできない。アジア杯3位以内を目標とするザックジャパンにとって、まだまだアジアのライバルはたくさんいる。

 カタールでの大会だけに、地の利のサウジアラビア、イランなど、ハードルは高い。オーストラリアもいる。その強敵相手に点が取れないと、勝ち点は稼げない。右サイドで活路を見いだした指揮官だが、2カ月後にはさらに未知のいばらの道が待っている。【盧載鎭】