W杯ドイツ大会で初優勝し、なでしこフィーバーが続く中、エース沢穂希(32=INAC)が、心無いファンから逃れるため引っ越しをせざるを得ない状況に陥っていることが29日、分かった。練習後、一部のファンに追いかけられ自宅を突き止められた沢は、外出も極端に制限される状況。神戸市内の自宅からセキュリティーの厳しいマンションへの引っ越しを検討している。関係者が練習場へ車で送迎するなど完全ガードしている。

 冷めやらぬなでしこフィーバーの陰で、沢が住み慣れた自宅からの引っ越しを決断した。この日の練習後、沢は「マンションもセキュリティーのしっかりした所を探します」とポツリと漏らした。

 一部のファンが沢の神戸市内の自宅を突き止めたという。この日も練習にはファン約150人が集結。練習後、沢はテレビ局の取材などをこなすため、足早に練習場を後にしようとしたが、スタジアム外で待機していたファンがサインを求め殺到。事前に張られていたロープやコーンは無残にも踏み倒され、何の効力も発揮しなかった。

 この状況に恐怖を感じた沢は再びスタジアム敷地内に避難。ここ数日、練習後のファンサービスでは腕を無理やり引っ張られるシーンもあった。INACの星川敬監督(35)からは沢ら7選手に「外出する時はマスクやサングラスを」と変装指令が出ているが、変装どころか今や自由に外出すらできない状態だ。

 W杯前は自転車で練習場と自宅を往復し、近くのスーパーや商店街で気軽に買い物をしていた。沢は「自転車にすら乗れてないですもん。スーパーにも行けないし。練習への行き帰りも車で送ってもらって…。ホント申し訳ない」と明かした。庶民派としても人気だった沢が“らしくない”行動を余儀なくされている。「女子サッカーのために」と極力ファンサービスに努めてきた沢だが、W杯優勝の代償としてはあまりにも悲しすぎる現実だ。