<W杯アジア最終予選:オーストラリア1-1日本>◇12日◇ブリスベーン・スタジアム

 まるで敗軍の将だった。声に力がこもらない。試合後の監督会見。アルベルト・ザッケローニ監督(59)は終始うつむき加減で、ボソボソと話した。2月にウズベキスタン戦に負けた直後と酷似する。「6月の3戦で勝ち点7は、今の日本の力を考えれば当然のレベル」。胸を張るコメントの時も、表情は暗いままだった。

 勝ち切れない。数々の追い風に乗れず、アウェーで引き分けた。一方的に攻められていた前半13分、相手左ボランチで攻守の軸としてフル回転していたブレシャノが負傷退場。交代で入ったMFミリガンは後半10分に警告2枚で、早々退場となった。後半終了間際にDF栗原が退場になるまで、30分以上を数的有利で戦ったが、勝ち点1しか奪えなかった。

 「今日は2つの問題があった。1つは前半最初の方でロングボールのこぼれ球が拾えなかったこと。2つ目はロングボールを入れられた時に苦労させられた」。指揮官はその2点を反省したが、相手の高さやロングボールは対戦前から分かっていた。しかし対処はできなかった。改善策を聞かれると「ハイボールの時は相手のペース、グラウンドでつなげればうちが有利」と、今後の対策ではなく、状況説明にとどめた。

 後半ロスタイムには、監督自ら勝利をあきらめ、引き分け狙いに切り替えた。FW香川をベンチに下げDF伊野波を投入した。終了直前、日本の攻撃時には、攻め上がる長友に大きなジェスチャーでバックラインまで下がるように指示した。

 大きな傷痕も残した。この日、警告を受けたDF今野と内田、さらに退場したDF栗原は、次戦のイラク戦(9月11日)に出場できなくなった。日本を知り尽くすジーコ監督との対戦前に、再び露呈した高さ不足とDFラインのタレント不足。日本は、アウェーで勝ち点1は得たが、このグループで抜き出る好機をみすみす逃してしまった。【盧載鎭】