キャプテンの「底力」を見せる。日本代表は今日6日に親善試合UAE戦(東北電ス)に臨む。W杯アジア最終予選イラク戦(11日、埼玉)前の貴重な一戦。今夏、所属クラブで移籍を模索しながら、実現に至らなかったMF長谷部誠(28=ウォルフスブルク)は、約3週間ぶりの実戦でぶっつけ本番として臨む。プロ11年目の経験を武器に、ザッケローニ監督からは90分出場指令を受け、不安視される試合勘を取り戻す。

 不安感を一掃するように、笑みをこぼした。日本の主将を務める長谷部にとって、3週間ぶりの実戦となるUAE戦。前日練習を終え、ブランクを自覚していた。「確かに試合に出ていないことで、試合勘のズレは出てくる。でもそれは経験でカバーできる。皆さんが心配することは分かりますけど、僕もプロで11年やってきた」。8月15日のベネズエラ戦に出場して以来、試合から遠ざかった。わずか3週間。されど3週間。そのズレを認めながらも、取り戻せる自信がある。

 新天地を模索したが、実現しなかった。昨季先発した20試合のうち、13試合で右サイドバックとして起用された。本職のボランチはわずか1試合のみ。8月に入って所属するウォルフスブルクのマガト監督に自ら、移籍の話を切り出した。容認を受け移籍先を模索した約1カ月間、ほぼ1軍の練習に参加したが、事実上の“浪人生活”。試合には出られない。開幕したブンデスリーガでは、19人目として遠征に同行しながらも、試合はスタンドで見守った。

 残っていた2年契約が足かせとなって、8月末に残留が決定したが、空白の3週間が生じた。メンバー発表会見で「UAE戦で試したい」と語っていたザッケローニ監督も「できれば90分やってもらいたい」とフル出場を厳命。イラク戦を前に不安を取り除きたい指揮官の気持ちを聞き「90分やるつもりでいる。代表は調整の場ではないので。結果を残すつもり」と、応える覚悟だ。

 敵将ジーコは日本代表監督時代に、A代表に初めて招集してくれた恩師でもある。「あのときは海外組がいない国内組だけだったけど、試合で成長した姿を見せたい」。代表候補だった、あのときとはもう違う。W杯ロードを争うライバル国の主将として、迎え撃つ。

 役割は中盤の底でチームの力になること。本田、香川らタレント豊富な前線を支えるためにも「パスをつないでサイドから崩す。攻めているときに、味方の位置を確認してポジションをとる」。縁の下で意地を見せる。それが日本の底力になる。【栗田成芳】