恐怖ではなく、真剣かつ楽しい環境をつくる-。日本協会は30日、2015年U-20W杯ニュージーランド大会を目指すU-18日本代表の監督に鈴木政一氏(58)就任を発表。02年に磐田をリーグ制覇に導いた実績を誇る新指揮官は、3大会連続でU-20W杯出場を逃している「課題の世代」の指揮を執る上で、社会問題化している体罰を全否定。真剣で楽しい環境をつくり、黄金期の磐田のようなスペシャリストを育てる意向を示した。

 経験豊富な指揮官は、穏やかな表情で口を開いた。「怖さでどうこうはしない。今日は楽しかったという状況をつくるのが仕事。代表の世界では結果を求められるが、過程も大事」。鈴木監督は、柔道界でも発覚した体罰を一蹴した。

 02年にFW中山、MF藤田、名波らを擁する黄金期の磐田を日本一に導き、その後育成の仕事も務めた。この2年は日体大の監督として母校を関東1部に復帰させた。トップ、育成、大学…。「全てを知る指導者が一番良い指導者だと思う」。自らが持つ幅広い経験に対して自信を示した。

 日本は現在、U-20W杯出場を3大会連続で逃しており、この世代は課題が山積みだ。4大会ぶりの出場権獲得は「責務」となるだけに重圧はあるが、「勝つためだけでなく、この年代をA代表につなげるためにどうするかを考えつつ、結果も出す」と言い切った。

 「ザッケローニ監督も言っているが、世界と戦うためにはまずは個人。個人でダメならグループ。それでダメならチームで戦う。オールマイティーよりスペシャリスト」。点取り屋の中山、司令塔の名波、センス抜群の藤田、守備職人DF服部らスペシャリストをそろえた磐田を想起させる。

 日体大で20歳前後の大学生を指導した経験も生きる。「サボれば厳しく言うけど、僕はたたかない。ベンチでガーッと言うと守備ができて攻撃ができない選手が、守備までできなくなる」。ベテラン指揮官は恐怖ではなく、真剣かつ楽しく結果を求めていく。【菅家大輔】

 ◆鈴木政一(すずき・まさかず)1955年(昭30)1月1日、山梨県生まれ。石和高、日体大を経て磐田の前身ヤマハ発動機に入社。現役引退後はヤマハのコーチ、総監督、磐田のサテライト監督などを経験した。00年9月から02年まで磐田監督を務め、02年にリーグ制覇を達成した。その後は磐田のフロント入り。10年9月からJFL長野パルセイロの強化部長、11年4月から母校日体大の准教授に就任し監督を務めている。