日本代表のFW本田圭佑(26=CSKAモスクワ)が、日刊スポーツのインタビューに応じた。目標にする14年W杯ブラジル大会まで、残り488日。どうやって世界の頂点に上りつめるのか-。今、何を考えているのか-。日本のエースの真相に迫った。13年の初ゴールを挙げた親善試合ラトビア戦(6日)を終え、本田は8日、関西空港発の航空機で欧州へ戻った。【取材、構成=八反誠、益子浩一】

 W杯で優勝する-。本田がそう公言したのは2年半以上も前のことだ。有言実行とはいかなかったが、10年W杯南アフリカ大会で日本は16強進出。確かに世界を驚かせた。そして次のW杯まで500日を切った今、何を考え、残り1年半でどう進化しようとしているのか?

 1月中旬。国内で自主トレ中の本田に、胸に秘めた思いを聞いた。

 「いつも言っているけれど、現状に満足なんかしていない。満足なんかしていたら前には進めへんし、俺はあえて厳しめの評価を自分にしているところがある。去年(10月)のブラジル戦だって、満足はしてない。でもいいねん。0-4で負けたことが、いいねん」

 そこに、本田独特の考え方がある。

 「『1点も取っていないでしょ…』。そう言う人もいる。でも、俺にとってはポジティブなんです。ここに第1思考がある。『1点も取れてないやん。こんだけ(ブラジルとの差は)遠いやん』。次に第2思考がある。『そんだけ負けたやん…。1点も取れてないやん…。だから次は…』。人はだいたい第1思考しかできない。これ、凡人やねん。一流は第2思考をする。投資家もこれで勝つんよ」

 昨年10月の欧州遠征では、フランスに歴史的勝利を飾った一方で、本田が出場したブラジル戦は0-4の大敗だった。その試合後、本田はあえて前向きな発言をしている。そこに違和感があった。

 だが、本田の思考法はこうだ。大敗を悲観的にとらえ、W杯までの1年半でブラジルとの差を埋めるのは難しい-。そう考えるのではなく、負けたことでその差を埋めるために、ひたすらに自分を追い込む-。それは、転んでも、次に成功するためにはい上がってきた男の姿だろう。

 それでは、本当にW杯までにブラジルに勝てるのか?

 日本は世界一になれるのか?

 本田圭佑を信じていいのか?

 あえて厳しい質問を投げかけると、言葉は熱を帯びてきた。

 「俺、本気やから。ほっといて欲しいんよね。W杯まで俺のことは忘れてくれてもいいくらい。聞かれるから、答えるけど。見ておけ、としか言えない。無理だと言っているヤツは、どうせ俺に見返されると思う。覆されるんや、と。俺はそんなん(批判的発想)に惑わされへんしね」

 そして、こう続けた。

 「確かに今まで、できなかったことも多いよ。それは、認める。でも今まで、俺ができたことだってある。だから、そこ(達成したところ)をW杯に持って行く。そういう思いしかない。無理って言うてる人は、そっち(達成できなかったところ)を言うてるんやろ。でも有言実行したことだって、あるんやから」

 信念がぶれることは一切ない。10年W杯の直前。公の場で「W杯で優勝する」と語った時、誰も信じる者はいなかった。それが2年半がたった今、選手もサポーターも、多くの人たちが本田に触発されるようになった。もしかしたら、14年W杯で…。世界一は無理でも、うまくいけば4強くらいには入れるのではないか。そんな雰囲気すら漂いつつある。本田はいつも強気だ。先頭に立って、日本を引っ張っていく。そんな思いが、言葉の端々に込められている。