<東アジア杯:日本2-0中国>◇20日◇ソウルW杯スタジアム

 ニューヒロインの誕生だ!

 東アジア杯が開幕し、3連覇を目指すなでしこジャパンは中国に快勝した。前半途中から出場したMF中島依美(22=INAC神戸)が、後半12分にゴール前へ切れ込んで左足シュートを決め、代表初ゴールをマーク。守備力を買って起用した佐々木則夫監督(55)にとっても「うれしい誤算」で、今後の活躍に期待を抱かせた。

 「この距離だったら狙える!」。中島は迷わず左足を振り抜いた。DFのタックルをかわし、右から来た大儀見のパスを受け、中央へ流れながらシュート。きれいな弾道がゴール左へ吸い込まれた。「なでしこに選ばれたからには結果を出そうと決めていた。1点を取れたことは本当にうれしいです」。初々しい笑顔でよろこんだ。

 10年U-20W杯で佐々木監督に見いだされた秘蔵っ子。同郷で滋賀・野洲高の2年先輩、フランクフルト乾をほうふつさせる攻撃的MFだ。高校時代から面識ある乾とは卒業後、自然と交流が始まった。今も時折、連絡を取り合う間柄だ。カットインからのシュートにキレがあり、乾がINAC神戸の試合を観戦した際には「あの子、うまいよ」とうなった。

 挫折を乗り越え、代表に舞い戻った。11年W杯ドイツ大会直前の米国遠征。なでしこジャパンに初招集され、2試合で途中出場したが本大会メンバーには残れず。その後は今年3月のアルガルベ杯まで、代表としてピッチに立つことはなかった。何をやっても攻撃一辺倒になりがち。そこで課題の守備に積極的に取り組んだ。現在では左右MFに加え、両サイドバックもできるスーパーサブに変身。「W杯前より自分のプレーが出せるようになった」と自信が芽生えた。

 前半途中の起用について、佐々木監督は「安藤選手の息づかいを聞いていたら、ケガをしそうな空気があったので代えた。中島選手は右サイドの守備が非常にバランス良いんですよ」と説明。守備面での成長を認められた瞬間でもあった。

 尊敬するクラブの先輩、MF澤へは韓国入りの前に「頑張ってきます」とメールを送った。澤からは「せっかくのチャンスなので、テレビの前で応援しているから頑張っておいで」と返事があった。その言葉を胸に奮闘する中島は「まだ1点。次の試合も出られるか分からないですけど、しっかり準備して、また結果を出したい」。代表初ゴールの余韻に浸ることなく、25日の北朝鮮戦に、気持ちを切り替えた。【千葉修宏】

 ◆中島依美(なかじま・えみ)1990年(平2)9月27日、滋賀県生まれ。野洲小4年でサッカーをはじめ、中学時代は大阪高槻の下部組織でプレー。野洲高時代にはクラブチームのFCヴィトーリアに所属した。09年にINAC神戸に入団。家族は両親と姉2人。