八百長問題を抱える日本代表ハビエル・アギーレ監督(56)に新たな疑惑が浮上した。スペイン1部リーグのサラゴサ監督だった2011年5月、同クラブのマネーロンダリング(資金洗浄)に関与している可能性があることが27日、分かった。イグレシアス会長が、同監督や複数選手の口座にボーナス名目で総額96万5000ユーロ(約1億1100万円)を入金し、その後、帳簿に残らない形で再びサラゴサに戻し、資金洗浄に使われた可能性がある。事実なら悪質な犯罪行為に該当し、八百長問題以上の波紋を呼びそうだ。

 八百長問題がかすむほどの新疑惑だ。日本の指揮官が、資金洗浄に関与している可能性が浮上した。サラゴサ監督時代の11年5月17日と19日。アギーレ監督の口座には、同クラブから2度に渡り、ボーナス名目で計8万5000ユーロ(約980万円)が振り込まれ、同19日と20日に同額が引き出されたとされている。

 引き出された後の金の動きは明確ではなく、関係各所の銀行口座を調査したスペイン検察当局は、10-11シーズン最終節(同5月21日)の対戦相手だったレバンテ側に渡った可能性があるとして「八百長疑惑がある」とバレンシアの裁判所に告発した。

 スペインリーグ関係者は「その金は、マネーロンダリングに回った疑惑がある。検察はその可能性も視野に入れているはず」と明かした。口座から引き出された金がレバンテ側ではなく、再びサラゴサ側に戻ったが、帳簿に記載せずクラブが裏金をつくったとの疑惑だ。実際にサラゴサは約2週間後の同6月8日、倒産に値する「債務の法的整理を目的とした倒産法の適応申請」を行っている。債務は1億1000万ユーロ(約127億円)だった。

 アギーレ監督は昨年12月27日、東京・文京区のJFAハウスで八百長疑惑に対し、無実を主張した。しかし、肝心な金の流れは明確にせず「そのことは司法当局に答えたい」と、自身にかけられた疑惑を、自らの言葉で晴らすことはできなかった。

 スペイン各紙は裁判所が、検察当局の告発を受理したと報じているが、日本協会の調べでは、まだ受理はされてないという。曖昧な状況だが、同監督が休暇中の2月に出頭命令を受ける可能性はある。

 今後の捜査は資金洗浄の疑惑に転換される可能性もあり、もし、その過程でアギーレ監督が報酬を受けたとしたら、脱税疑惑にまで発展することも考えられる。八百長疑惑に加え、マネーロンダリング疑惑に、脱税疑惑-。疑惑だらけの指揮官が、身の潔白を証明できるか。それを見守る、日本のサッカーファンが払う代償は、あまりにも大きい。

 ◆マネーロンダリング

 犯罪行為で得た不正資金や賄賂を口座から口座へ転々とさせ、資金の出どころや受益者を隠す行為。不正資金を正当な資金のように「洗濯する(ロンダリング)」こと。麻薬取引、武器密売、人身売買などにも絡み国際社会で問題視されている。先進国では、資金ルートを解明することが組織的犯罪の予防と撲滅につながるとして、取り締まりを強めている。

 ◆10-11年のスペインリーグ事情

 失業率が20%を超える大不況下のスペインで、1部から2部A、Bまで含めたリーグ所属クラブの負債総額は、約40億ユーロ(約4600億円)ともいわれた。給与未払いが目立ち、倒産法を適用して債務を投げ出すクラブが続出。13位で1部残留を決めたサラゴサもシーズン終了後、債務の公的整理を申請した。倒産法には、給与支払い義務が50%免除される措置などがあり、同法を利用して移籍金の支払いを免れるケースも横行した。その後はスペイン・プロリーグ機構(LFP)がかじ取り役となり、財政改善を図っている。