11年ぶりに2ステージ制が導入されるJリーグのJ1が7日に開幕する。各クラブが移籍や新加入で「新戦力」を補強した。その目玉が、J2磐田から東京へ移籍した元日本代表のFW前田遼一(33)だ。史上最多3度目の得点王が視野に入るストライカーはプロ16年目で初めて移籍。新鮮さと重圧が入り交じった心境を明かした。今日2日から今季のJリーグの話題を随時お届けします。

 移籍決断から約2カ月。今年34歳を迎える前田は、新天地で居場所を見つけていた。昨季13発を決めた日本代表FW武藤と強力2トップを組み、開幕戦で昨季3冠王者G大阪に挑む「大阪春の陣」。初めての移籍で迎える開幕に、新鮮さとともに重圧を口にした。

 「高いレベルでチャレンジしたい気持ちが強かった。移籍は『どこでやればうまくなれるか? 成長できるのか?』と考えた結果。今、新鮮で楽しい。ただ、結果を出さないといけないというプレッシャーも感じているけど。やることをやり切ってダメなら、割り切れる。いい状態で開幕を迎えられると思う」

 この2カ月、新たな仲間の特徴を、着実につかんでいった。左サイドバックの日本代表DF太田には「クロスのタイミングがすごく取りやすい。『今』というのが分かる」。クロスを合わせてのゴールは、前田のお家芸。さっそく2月21日のプレシーズンマッチJ2福岡戦では、その左クロスから移籍後、初ゴールをマークした。

 2トップを組む武藤との連係は「縦へのスピードがある選手。これをもっと生かせればいい。自分がうまく起点になれれば、いい攻撃ができる」と試行錯誤し開幕を前にイメージを膨らませる。チームの輪に溶け込むことに新鮮さを感じながら、ここまで過ごしてきた。

 これまで何度も移籍の分岐点があったが残留をしてきた。今回、移籍の決断に、家族も「好きにしていい」と支えてくれた。沖縄、宮崎、福岡と続くキャンプの最中、大黒柱が不在の家族は磐田から東京への引っ越しを済ませた。初めての移籍にも支障なく、日々の練習に集中できる環境が整い「ありがたい」と感謝し、万博での戦いに備える。

 歴代5位の137得点をマークし、2季ぶりのJ1では、更新の可能性がある記録がめじろ押し。通算ゴール数でカズ(139点)、ゴン(157点)超え。その先には史上最多となる3度目の得点王。だが、「ピッチで結果を求めないといけないということは変わらない」と16度目の開幕を迎える。自身の記録とは関係なく、チームのために黙々とゴールを狙う。前田はそんな男だ。【栗田成芳】