Jの主役が開幕から約1カ月半が経過しピッチに戻って来た。左足首の手術を受け出遅れていた横浜MF中村俊輔主将(36)がナビスコ杯名古屋戦で復帰を果たした。後半10分から途中出場。トップ下に入りFKとCKも蹴った。試合は敗れたがようやくプロ19年目のシーズン“開幕”を迎えた。

 中村はピッチに足を踏み入れると、いきなり右CKを蹴った。手術を受けた左足で。ニアサイドでクリアされたが復帰への確かな弾道だった。同20分には中央左約30メートルのFKも蹴った。これは壁に当てたがセットプレーは当然のように中村の仕事だった。持ち場はトップ下。「体も軽いし、心肺機能もまったく問題なかった」。横浜の象徴である背番号10が、いるべき場所に戻ってきた。

 2月16日に三角骨と関節内遊離体(通称ネズミ)の摘出手術を受けた。「全治2~3カ月」の診断だったが手術直後に親しい関係者には「1カ月で復帰する」と宣言。当初は驚異的なペースでリハビリを続けていた。しかし、痛みが出てペースは鈍った。もどかしい思いもあり多くを語ろうとしなかった。復帰までの言葉は少なかったが、この日のピッチ上でのプレーは実に“雄弁”だった。

 復帰の過程で1度も実戦をこなしていない。ぶっつけ本番だったが、中村のタクトで前半は停滞していた攻撃が滑らかになった。モンバエルツ監督のもと今季の横浜はハリルジャパンのように奪ってから縦に速い攻撃を目指している。ここに遅れていた司令塔が加わり、自在のギアチェンジが可能になる。「攻撃の使い分け、自分が入ってアクセントになれたらいい。速い攻撃ばかりでなくブレーキをかけなきゃいけない時もある」。35分のプレーで課題を的確に言い当てた。

 痛みも残り「まだ完治ではない」というが、大きな問題ではない。復帰戦は黒星。「勝ち点3を、勝つサッカーをしないと。その中心にいられるように」。J随一の走行距離を誇り、縦に速くよく走っていた横浜に司令塔が帰ってきた。主役が戻り横浜も、Jももっと面白くなる。【八反誠】