来季から使用するG大阪の新スタジアムが今秋、大阪・吹田市の万博記念公園に完成する。観客席最前列からタッチラインまで約7メートルで、国際Aマッチ開催が可能な約4万人収容のサッカー専用スタジアムでは日本で一番客席と近い。日本で初めて募金によって建設中の会場は、かつてない臨場感があふれることになる。明日11日に開幕のJ1第2ステージを前に、昨季3冠で今季は年間王者を目指すG大阪の新本拠地の秘密に迫った。

 着々とその姿が見えてきた。G大阪のクラブハウス横に今秋完成予定のサッカー専用スタジアム。140億円を超える寄付金から造られ、G大阪スタジアム建設担当の本間智美さんは「欧州30スタジアムを見学した知識が最大限に生かされている」と誇る。その最大の特長が他の会場を圧倒する臨場感だ。

 メーンスタンド最前列からタッチラインまでわずか約7メートルしかない。FIFA(国際サッカー連盟)の規定では8・5メートルが目安とされているが、直接掛け合って許可を得た。ゴール裏もゴールラインまで約10メートルという距離だ。

 本間さんは「国際試合開催が可能な4万人規模のスタジアムでは、日本で最もピッチとの距離が近い」と説明。サッカー専用スタジアムである埼玉スタジアム(約6万3700人収容)は約14メートル、カシマスタジアム(約4万人)は約15メートルなので、違いは一目瞭然。高さも最前列はピッチから約2メートルで、選手とほぼ同じ目線で楽しめる。

 あまりにスタンドまでの距離が近いため、日本で初めて監督や選手がいるベンチが観客席に埋め込まれた。これはマンチェスターUの本拠地に倣った。来季へ続投要請される長谷川監督が観客席のすぐ隣にいて、試合中の指示など肉声が聞けるかもしれない。新スタジアムはライブ感にあふれる。

 海外の知識を生かし、建設費も低く抑えた。一般的にスタジアム建設費は1席50万円で計画されると言われ、4万人規模での140億円は、平均より約3割のコスト減となっている。本間さんは「欧州のように目に見えるところにお金をかけ、裏側はシンプルに作った」。関係者の部屋などできるだけ簡素な作りにした。新国立競技場は整備費が約2520億円まで膨らみ、議論となっているが、大阪らしく「安くていい物」を実現させた。

 新国立競技場で問題になっている「屋根」だが、新スタジアムは全席屋根でカバーされており、ドームを除けば日本で唯一。南側は素材をガラスとし、芝生に太陽の光が届くよう工夫されている。スタンドの下部には通風口が設けられ、自然の風も通る。パスサッカーを武器とするG大阪にとって大事な芝生の管理も徹底されている。アイデアが詰まった世界基準の新スタジアムは、あとわずかで完成する。【小杉舞】

<新スタジアムあらかると>

 ▼名前 吹田市立スタジアム(仮称)。完成後は市に寄贈されるため、吹田市が命名予定。

 ▼ロッカールーム アウェーチーム前の廊下の壁面には、G大阪のエースFW宇佐美のゴールシーンなどを装飾。精神的に威圧する。

 ▼VIP席 約2000席と日本最大級。幅4メートル×奥行き8メートルの小部屋が30部屋、約150人が一同に着席できる大部屋も4、5カ所設置される。

 ▼環境問題 近接する「EXPOCITY」と太陽光発電した電力を分け合う。道路を挟んでの「電力融通」は日本で初めて。

 ▼耐震対策 屋根に「免震装置」を設置。揺れが発生すると、建物と屋根が別の動きをして倒れにくい。