あの時の悔しさは忘れない-。ブラインドサッカー日本代表の加藤健人(29=埼玉T.Wings)が15日、東京・八王子市の代表合宿に参加し、9月の「アジア選手権」で対戦するイランを警戒した。
アジア選手権は、リオデジャネイロパラリンピックの出場権が懸かった大会。中国やイランなど計6カ国が参加する。総当たりリーグ戦を行い、上位2カ国が出場権を獲得する。世界ランキング9位の日本は、初戦で同5位の中国、2戦目で同12位のイランと対戦する。
この日の午前練習前には、選手やスタッフが円陣を組み、「日本!日本!日本!絶対リオ行くぞ!!」と気合を入れた。練習後、取材に応じた加藤は、アジア選手権について「イランは国際試合にほとんど出場しないため、データがない。中国より怖いかもしれない」と警戒した。
イランとは“因縁の対決”でもある。11年12月、ロンドン大会予選(仙台市)のイラン戦で悲劇が起こった。「引き分け」でも出場が決まる状況だったが、後半残り10分で2失点し、涙をのんだ。「あの時の悔しさは忘れていない。今回はイランに勝って、リオ出場を決めたい」と言葉に力を込めた。
魚住稿監督(38)は、ブラインドサッカーは視覚障害者らでプレーし、目が見えていない分、「選手の個性が出やすい」と指摘。その分、相手の「データ分析が重要」と強調した。
「最初の2戦も重要だが、ほかの試合でとりこぼさないことがポイントになってくる。3勝2分けで、勝ち点11が(出場権獲得の)ボーダーラインになると思うので、そこを目指して勝つための攻撃面を強化したい」。
加藤は高校生の時、視神経が萎縮する「レーベル病」になり、視力をほぼ失った。高校1年までサッカーをしていたこともあり、ブラインドサッカーに打ち込んだ。07年に代表に選ばれ、主力選手に成長。都内のアクサ生命保険で社員のマッサージを担当するセラピストとして勤務している。目の不自由な子どもに運動する機会をもってもらうために、埼玉県の特別支援学校で普及活動も行っている。