清水桜が丘が静岡学園に勝利し、初めての全国選手権出場に王手をかけた。相手に攻め込まれながら、後半27分、MF白井海斗(1年)がワンチャンスを決めた。清水商時代は12回出場も、2013年の庵原との統合後、果たしていない全国選手権出場は目前。決勝戦(15日・エコパ)は、藤枝東との名門対決になった。

 白井の大声が決勝弾を生んだ。後半27分、右サイドのDF水野歩夢(3年)が、ゴール前へ低いクロスを入れた。FW野木智大(3年)も走り込んでいたが、ファーサイドに詰めていた白井が叫んだ。

 「スルー!」

 反応した野木がボールをまたぎ、待ち受けた白井が、ダイレクトで右足シュート。相手GK山ノ井拓己(2年)は動けず、ボールはゴールに吸い込まれた。

 1年生で、普段はおとなしいが、勝負どころでは違う。「自分の所に(ボールが)来たら、いい体勢で打てると思いました。いつも声は出しているけど、周りにあまり聞こえていないのかも」。大滝雅良監督(64)も、思わずガッツポーズだ。試合後は、攻め込まれ続けた試合展開を振り返り、「あれしかチャンスはなかった。白井は何か持っているよね」。準々決勝、清水東戦(3日・3-2)に続く2戦連続の決勝弾に、舌を巻いた。

 実は、V候補静岡学園に対して「作戦ゼロ」で臨んでいた。準々決勝は延長戦の末に勝利したが、激闘の代償は大きかった。体調不良者やケガ人が続出。守備の要DF大森圭一郎(3年)と主将MF杉本隼(3年)、FW山田柊斗(3年)は3日間で1度も全体練習に参加できなかったが、この日は3人ともフル出場。大滝監督は「対策ではなく、うまく気持ちで対応できた」。腰痛を抱える杉本は、両足をつりながら最後まで走った。笑顔は控えめで「つらかったけど、先制してからはこっちのペースになった。決勝で勝って、喜びたい」と話した。

 清水商時代は12回出場も、13年の学校統合後、初となる全国選手権出場に王手をかけた。今季の新人戦、全国高校総体とあわせた県3冠にもあと1勝。決勝戦の相手、藤枝東は今大会ここまで無失点を誇るが、決勝トーナメント3戦連発で絶好調の白井は言った。「決勝でも点を決めて、全国を決めたい。運も味方につけて戦いたいです」。同じ会場で行われていた藤枝東-飛龍戦も見て、イメージはできている。15日、スーパー1年生が、新たな学校史を刻む。【保坂恭子】