仙台レディースは、INAC神戸MF澤穂希(37)の引退カウントダウンという異例の空気のなか、持ち味を出せないまま完封負けを喫した。初の決勝戦進出を逃し、2年連続4強止まりの悔しい結果で、今シーズンを終えた。

 がっくり肩を落とした。レジェンド澤率いる神戸の前に完敗だった。リーグ戦とは異なる一発勝負の重圧や異様な会場の雰囲気。相手の術中にはまり、勢いすら消されたかのようだった。試合終了を告げる笛が鳴り響くと、選手たちは膝に手をつきうなだれた。MF川村優理(26)は「神戸というチームにぶち当たって負けた。悔しいです」と唇をかんだ。

 仙台Lらしさが出せなかった。今季強みとしてきた走力も、縦に速い攻撃も影を潜めノーゴール。シュート数自体は相手と同じ10本を放ったが、ネットは揺れなかった。FW有町は「(相手に)気持ちが入っているなと感じたが、それに対応できなかった」と素直に負けを認めた。MF中野は「苦しい試合だったが、チャンスはあった。決めていれば…」。出足速く寄せてくる相手に翻弄(ほんろう)される間に失点を許し、涙をのんだ。

 今季は幕を閉じるが、来季は「もっと強くなって帰ってくる」とMF嘉数主将は誓う。「決勝まで行くつもりだったので悔しいが、良いチームで良い経験ができた1年。来年はチーム力に加え、個の力が必要。もっと上に行かなきゃいけない」。初Vの夢は断たれたが、充実したシーズンは来季につながる。【成田光季】