「ベガルタはサッカー人生のほぼ全て」-。

 J1リーグが2月27日に開幕した。仙台は直前の宮崎キャンプで、チームの大黒柱MF梁勇基(34)が、今季へかける思いを語った。

 J1昇格、12年の2位躍進、さらにはACL出場と、歴史の中心にはいつも梁がいた。まさに「ベガルタの太陽」として輝き続けてきた鉄人は、仙台一筋13年目を迎えた今年、どんな心境でピッチに向かおうとしているのだろうか。

 Jチーム最長キャンプが幕を閉じれば、新たなシーズンがまた訪れる。今年34歳を迎え最年長となった梁は、1カ月に渡るキャンプの充実感を口にした。

 「個人としてはけがもなく全てのメニューをやれている。良い感じですね」。

 今春も別メニューだったことは1度もない。それどころか今季増えた若手らにもまったく引けを取らない運動量でピッチを駆け回る。生え抜きルーキーの佐々木匠(17)をはじめ若手にも積極的に声をかけ、淡々と1人でやることが多かった居残りFK練習も、後輩らと並んで蹴るようになった。

 「シーズンで勝っていくには共通意識と一体感が必要で全員で戦わないといけない。(若手は)焦らずやるべきことをやって、少しずつステップアップして欲しいと思って話しています。みんなまだまだ伸びるし、成長を見るのはうれしい。まぁ、その反面、自分としてはクソっていうのもあるし。(FK練習で)良いキックするなぁ~って思ったら俺ももっと磨こうと思えるし。まだまだ負けてられへんな、という楽しみにもなってますね」。

 阪南大から仙台に入団、プロデビューし13年目を迎える。年々実力をつけ、中心選手として走り続けてきた。チームの顔としてだけではなく、過去には北朝鮮代表として世界でも戦ってきた。

 「今思うとあっという間でもう13年もおるんか~って感じ。古い話ですけど、自分が若手だった時、同期の萬代(宏樹=現水戸)や中田(洋介=引退)が先に試合に出てて、その姿を見たらすごく悔しかったのを覚えてる。だからこそ今に見とけよ!って心構えで、ずっと頑張って来られた。今はいかに踏ん張れるかって年齢になりましたけど(笑)」。

 今季は昨季務めたボランチから1列前、サイドハーフ(SH)での出場が多くなりそうだ。親しみ慣れた位置で、よりゴールに近い場所でのプレーになる。チームのトップ5(5位以内)を達成させるための個人目標もしっかり掲げている。

 「ここ3年はずっと残留争い。負けが多い証拠だし、面白くないし悔しい。とにかく今年は本当に勝ちたい。シーズンは勝って笑って終わりたい。個人的にはポジションにこだわりはそこまでないけど、SHならボランチより得点も取れる位置。10点は取りたいと思ってます」。

 開幕を目前にした2月中旬以降、目の色が変わってきた。自分のプレーでチームを勝たせたいという思いが、伝わってくる。ベテランは、考え方も変わった。

 「このオフ、初めてサッカーと離れたいなと思った。頭も体も疲れてた。子どもたちが寝た後の1人の時間にいろいろリセットして、取り払って考えたりしてて。毎年早く済ませていた契約更新も最後だった。今までは漠然と35歳くらいまでやれたら十分、やれるやろって思ってたけど、現実は少し違う。あと何年やれるかなっていうのも(頭を)よぎるし。でも若いときに考えなかったことを考えるようなって、どんどん欲が出てくる。体力はまだ自信あるし、そこはモチベーションになってる。ボロボロになるまでやりたい。1年1年悔いのないようにやろうとか、もっとサッカーに打ち込んでいこうという気持ちがより一層強くなった」。

 今年にかける思いは誰よりも強い。

 「間違いなく言えることは、ベガルタは自分のサッカー人生のほぼ全て。これまでやってきたことの集大成として今がある。それこそベガルタで引退したら、サッカー人生のほぼ全てになると思うんですよね」。

【取材、構成・成田光季】