Jリーグのスタジアムのトイレの洋式化が急速に進んでいる。クラブライセンス制度が定める基準は「1000人の観客に対し、少なくとも洋式トイレ5台、男性用小便器8台」。つまり和式はトイレとカウントされない。各スタジアムの洋式トイレ数がどれだけ基準を満たしているかを示す充足率は、制度導入前の73・2%(12年)から89・7%(15年)に改善された。温水洗浄便座トイレが登場するなど、進化しつつある各スタジアムのトイレ事情を探った。

 スタジアムの質はトイレの数や質で分かる!? Jリーグはトイレの質や数の基準を定め、洋式化を推奨している。クラブライセンス交付規則I・12には次のように明記されている。

 (1)スタンドには、どの席からもアクセス可能な場所に男女別のトイレ設備を十分に備え、かつ、車椅子席の近くには、多目的トイレを備えなければならない。

 (2)トイレは明るく、清潔で、衛生的でなければならず、試合中もその状態を保たなければならない。

 (3)スタジアムは、1000名の観客に対し、少なくとも洋式トイレ5台、男性用小便器8台を備えなければならない。

 要は利用しやすく快適でなければならず、和式ではなく洋式に、ということだ。Jリーグによると、数はAFC(アジアサッカー連盟)の規則に準じた。「洋式」に限定したのは世界基準だから。基準を満たしていないクラブには、改善計画書の提出など制裁が科せられた上でライセンスが交付されている。

 Jリーグによると、基準を満たしたスタジアム数は、12年シーズンの10から15年シーズンには18に増加。全スタジアムの洋式トイレの充足率は73・2%から89・7%に上昇し、着実に洋式化は進んでいる。Jリーグは各スタジアムの数値を公表していないが、日刊スポーツの調べではJ1では豊田スタジアム(名古屋)が146・41%でトップ。J1で基準を満たしていないのはエディオンスタジアム(広島)とパロマ瑞穂(名古屋)だ。

 各スタジアムでは快適にしようとする工夫が施されている。等々力(川崎F)カシマ(鹿島)日産ス(横浜)ノエスタ(神戸)などでは混雑を緩和するため、入り口と出口を「一方通行」にした。磐田と甲府は、すべて洋式で最新鋭の温水洗浄便座を備えた。Jリーグ関係者は「『トイレが汚いから観戦に行きたくない』とならないためにも、いつか100%の基準を満たすいい環境になれば」と期待している。【岩田千代巳】

 ◆16年シーズン(15年9月審査)のトイレの基準達成クラブ)

 【充足】札幌、仙台、鹿島、水戸、群馬、大宮、浦和、柏、千葉、町田、川崎F、長野、磐田、G大阪、愛媛、鳥栖、大分。名古屋は豊田ス、C大阪は金鳥スタが充足。

 【制裁免除】東京、東京V、栃木、横浜、横浜FC、湘南、新潟、甲府、松本、富山、岐阜、神戸、山口、徳島、福岡、長崎、熊本。京都と北九州はスタジアム新設発表のため免除。

 【制裁】山形、金沢、清水、名古屋(パロマ瑞穂)、C大阪(ヤンマー)、岡山、広島、讃岐。

 ◆Jリーグクラブライセンス 競技場や組織運営などJ1、J2のクラブとしてクリアすべき56項目の基準を設けている。各基準は(1)達成が必須のA等級(2)達成は必須だが、未充足の場合は制裁が科された上でライセンスは交付されるB等級(3)達成が推奨されるC等級の3つに分かれる。スタジアム入場可能数(J1は1万5000人以上、J2は1万人以上)はA等級、スタジアムのトイレ数はB等級。