「ミスターレフティー」と「アジアの壁」の対戦は、痛み分けに終わった。J1昇格クラブ同士の顔合わせとなった磐田対福岡は、2-2の引き分け。98年W杯フランス大会を経験する元日本代表で、親交の深い福岡井原正巳監督(48)と磐田名波浩監督(43)は試合後、固い握手を交わした。

 元磐田で現JFLアスルクラロ沼津の元日本代表FW中山雅史(48)も観戦に訪れ、「いいゲームをしてほしいね」と注目した一戦。激しい接触プレーが多く、両監督も白熱。テクニカルエリアを飛び出して第4審判に詰め寄る場面もあった。攻撃を重視し、今季初めて4バックで臨んだ井原監督は「次につながる引き分け」と納得の表情。名波監督との対戦には「個人的な部分の意識はなく、いい試合をして結果が出ればと思っていた」と話した。

 名波監督は、14年9月に就任。井原監督は15年から指揮を執り、お互いJ2を戦い抜いた。昨季はJ2と天皇杯で3度対戦し、福岡が3勝。J1自動昇格を争うライバルだったが、ピッチを離れれば家族ぐるみで付き合う友人。昨季J2最終戦で磐田が勝利しJ1自動昇格を決めた直後、名波監督の元には真っ先に井原監督から連絡があった。福岡は3位で自動昇格を逃してプレーオフに回る悔しい結果だったが「おめでとう」と連絡をくれたという。

 今季、名波監督は福岡の結果を気にしていた。「一緒に上がってきた同志。でもJ1残留へのライバルでもある」。試合後、お互いの肩に手を回して言葉を交わした2人には、笑みが浮かんでいた。【保坂恭子】