苦労人が花を咲かせた。新潟のプロ5年目のDF西村竜馬(23)が、スタメンでリーグ戦初出場。完封勝利に貢献した。

 夢だった光景が目の前に広がっていた。マンオブザマッチに選ばれた西村は試合後、お立ち台の上でサポーターの拍手に包まれた。「ユースからトップに入って、ここ(デンカS)でプレーするのが夢でした。勝てて良かったです」。思いのたけを言葉にした。

 90分間、体を張り続けた。神戸FWレアンドロ(31)、渡辺千真(29)らに食らいつき、決定打を許さなかった。ロスタイムにはセットプレーからの相手のヘディングをクリアに行き、左足がつった。それでもすぐに立ち上がった。試合終了の笛が鳴ると、新潟ユースの先輩、DF大野和成(26)が抱きついてきた。「うれしかった」と笑顔を見せた。

 12年、新潟ユースから昇格した。リオ五輪代表のFW鈴木武蔵(22)は同期入団。急性白血病で闘病中のDF早川史哉(22)は新潟ユース時代の同期。同い年の2人はU-17W杯に出場するなど、華やかな舞台を歩んできた。西村は年代別代表歴はない。鈴木、早川は新人で試合出場を果たした。西村は入団と同時にブラジル、JFLなどへ4年間期限付き移籍。今季、新潟に戻ってきた。下積みを経て、ようやくホームで試合出場を果たしたのが、この神戸戦だった。

 同い年の2人には、ライバル意識よりも親しみを持つ。ナイジェリア戦で鈴木が得点すると「やっぱり武蔵は何か持っています」と祝福。早川の存在は「あいつのつらさを考えれば、90分間耐えることなんて、なんでもないです」と力にした。2人が不在の中で、第2ステージのホーム初勝利に尽力した。「2人とも見ていてくれたと思う」。恥ずかしそうに笑った。