川崎Fが横浜との“ロスタイム9分”の死闘を制し、Jリーグチャンピオンシップ(CS)進出を決めた。FW大久保ら主力3選手を欠く中、2-0とリードして表示9分のロスタイムに突入。横浜に立て続けに2点を返され、瞬く間に同点に追いつかれたが、ラストワンプレーでFW小林悠(29)がJ“最遅”となる同10分に劇的ヘッド弾。90分以降に両チーム合わせ3発が乱れ飛ぶ打ち合いに終止符を打った。広島を下した浦和とともに年間勝ち点3位以内を確定し、CS出場を勝ち取った。

 2-0で後半45分が過ぎた。審判が掲げたロスタイム「9分」の表示にスタンドがどよめいた。まさに“等々力劇場”の開幕ベル。ロスタイム6分から2分間に立て続けに失点し、瞬く間に同点にされた。大久保の代わりにワントップに入ったFW小林は「何してんだよ…」とこぶしをピッチにたたき付けた。前節大宮戦で逆転負けした悪夢が頭をよぎった。

 MF中村が「まだ終わってないでしょ」と仲間を鼓舞し、貪欲にゴールへ向かった。執念でボールを追い、試合終了間際にCKを獲得。遠いサイドへ流れたボールをMF田坂が折り返し、小林が頭で押し込んだ。得点時間は表示より1分長い「10分」だった。

 負傷の続出でロスタイムは9分以上に及んだが、時間経過は電光掲示板に示されない。小林は「9分なんて人生初。時間経過がまったく分からなかった」と苦笑し「同点の後、まだ時間はあるかもと。(大久保)嘉人さんがいない分、自分が決めてチームを勝たせたかった」と諦めなかった。

 大久保と並ぶ今季15点目にも、2失点には「判断も含めてありえない。クリアすべきところは蹴ればいい」と厳しかった。疲労から思考が低下し、自陣で無理につなごうとしたパスを奪われてカウンターを食らった。反省は残るが、守護神GKチョン、大久保、MFエドゥアルド・ネットを欠く中で、勝ち点3を手にしたことは大きい。

 中村は「(主力が)いなくてもこれだけできるというのを見せられたと思う」と手ごたえを口にした。今季1度も連敗していないチームは、試練を乗り越え総力戦で白星をつかんだ。【岩田千代巳】