仙台のFWウイルソン(31)の退団セレモニーが、最終節ホーム磐田戦後に行われた。ブラジル人選手としてクラブ史上最長となる5年間在籍し、1年目の12年にはクラブ史上初の2位躍進に大きく貢献。サポーターや選手に信頼され、愛された男は、多くのサポーターや選手に見送られながら、ホームを後にした。仙台は磐田に0-1で敗れ、第2ステージ、年間ともに12位でシーズンを終えた。

 試合後も仙台サポーターは席を離れようとせず、ウイルソンの登場を待っていた。そして、サポーターが人文字で作った背番号「9」をバックにウイルソンは、慣れ親しんだピッチの上にチームメートとともに整列した。退団セレモニーが始まると、日本語で「みなさん、こんにちは」とあいさつし、こう続けた。

 ウイルソン 残念な気持ちでいっぱいですけど、まずはみなさんに感謝したい。ベガルタ仙台は自分のサッカーをさせてくれて、感謝したい。選手たちは本当の家族のようにしてくれて、いい思い出がいっぱいです。最後にサポーターには、いろんなメッセージをもらって、いい思い出がいっぱいです。本当に感謝したい。

 最後にまた日本語で「ありがとうございます」と、深く礼をした。

 その後、選手たちはコートを脱ぎ、ポルトガル語で「ありがとう、ウイルソン」の意味の「Obrigado!! Wilson」と書かれたTシャツ姿になった。リフティングをしながら、ウイルソンにボールをリレー形式でつないだ。胴上げもした。勝利で最後の日を飾れなかった悔しさはあったが、“仙台の王様”の功績をたたえ、感謝の気持ちを伝えた。

 感極まって、涙も見せたウイルソン。ただ、誰よりも悔しいのは、けがのために出場できなかった本人だろう。1日の退団報告会見では「もっとチームのためにやりたかった」と、悔しさをにじませた。その思いをくみ取って、何としても勝利を届けたかった最終節。ユアスタを後にする男へ、観客席から「レッツゴー、ウイルソン」の応援歌が向けられていた。【秋吉裕介】

 ◆ウイルソン・ロドリゲス・フォンセカ 1985年3月21日、ブラジル生まれ。12年に中国スーパーリーグ陝西宝栄(せんせいほうえい)から仙台に加入。1年目に13得点を挙げてクラブ史上最高位の2位躍進に貢献。J1通算128試合、40得点。