J2札幌が劇的な逆転勝利で首位を守った。敵地の千葉戦は前半1点を先制される苦しい展開。1-1に追い付き、引き分け濃厚となったロスタイムの後半50分、途中出場のFW内村圭宏(32)が右足ボレーで決勝ゴールを決め、貴重な勝ち点3をもたらした。25勝9分け7敗で、勝ち点84。20日の最終節金沢戦(札幌ドーム)で引き分け以上なら2位清水、3位松本の結果に関係なく、自動昇格圏2位以内が確定し、9年ぶりのJ2優勝も決まる。

 最後まであきらめない男の執念が、ドラマチックな幕切れを呼び込んだ。1-1の後半50分、DF河合のロングボールに、内村が反応した。「手前でヘイスが競り勝つか、流れてくるか。流れてきたら絶対シュートを打つと決めていた」。相手DFの死角を突き、左サイドからふらっと斜めに流れ入ると、ワンバウンドしたボールを、迷わず右足ダイレクトで振り抜いた。

 「相手も点が取れず前掛かりになっていたし1本あるかなと。チャンスは必ずあるとずっと狙っていた。難しいと思ったけど予感はあった。入ったらおいしいなあと」。力まずふわりと流したシュートは、追いかけてきたDF岡野の右足、GK岡本の右手をすり抜け、ゴール左に刺さった。ヒーローは猛ダッシュで看板を跳び越えると、サポーターの前で両手を広げ「うぉ~」と雄たけびを上げた。

 たまった鬱憤(うっぷん)を吐き出した。チーム唯一の全41試合に出場。攻守でひたむきに汗をかき、チャンスメークを続けながら3日讃岐戦から3戦連続先発落ちした。どうしてなんだ-。自問自答を繰り返しながらも「出たときに仕事をすればいい」と気持ちを切り替え臨んだ一戦で、劇的な勝利を呼び込んだ。流れを変える引き出しの多さを期待した四方田監督の期待通りの活躍。指揮官も「攻守にスイッチをいれられる選手。得点含め良い仕事をしてくれた」と喜んだ。

 フクアリでは13年3月3日開幕千葉戦でも0-0の後半46分にロスタイム決勝弾を決めていた。この日は、アウェーながら3000人の札幌サポーターが集結。3年前同様、わき上がる独特の雰囲気に勝負師の嗅覚が目覚めた。「アップからすごい応援で興奮した。ホームじゃないかと思うぐらい。早く出たくてうずうずしてた。これでやらないわけにはいかないから」。大歓声も追い風となり、7月31日山口戦以来8戦ぶりの敵地勝利につながった。

 10日が長女香咲(かえ)ちゃんの1歳の誕生日だった。狙い通りのバースデー祝砲で、一気に昇格を近づけた。「しっかり切り替えて、あと1個に集中したい。他は関係ない。最後は勝って終わる。それだけを考えている」。5年前、最終戦で昇格を決めた13番は、まだ浮かれない。残り90分、ひたすら爪を研ぎすませ、自身2度目の昇格へとけん引する。【永野高輔】

 ◆札幌FW内村の今季ゴール 自身4度目の決勝ゴールとなった12日千葉戦で通算11点目。内村が得点した今季10試合で、チームは7勝3分けと負けていない。4月29日徳島戦、5月15日水戸戦、5月22日讃岐戦では、いずれも決勝点となる先制ゴールを奪い、チームを1-0の勝利に導いている。