◆札幌MF小野伸二(37)

 申し分ない実績を持つ“天才”も、不惑を間近に控えて、チームでの役割は大きく変わった。全盛期を過ぎたベテランとの再契約を即決した札幌の野々村芳和社長(44)は「技術がうまい選手以上に、チームを勝たせることができる選手、クラブを大きく育てることができる人材には価値がある」と言う。地方の小さなクラブに、世界を知る小野の存在感は欠かせない。故障を抱えながらも、ピッチ外で若い選手の良き手本として奮闘する37歳は、やはり今でも輝いている。

 紳士的な振る舞いに、取材している側も度々驚かされる。2月のキャンプ期間中、宿舎の出入りで一緒になったことがあった。扉を開け「お先にどうぞ」と、スッと手を差し出した。恐縮しきりの私に「レディーファーストですから」。あまりに自然だった上品な所作に、感心してしまった。練習場では、ファンが落としてしまったサインを拾い上げ、泥を丁寧に除いて手渡したことも。外国人選手には積極的に語りかけ、チームになじむようアシストする。

 来季、清水時代の2012年以来、4年ぶりにJ1のピッチへ戻る。故障に悩み「J1へ行っても、うまくいかないのでは」と迷った時期もあったそうだが「同世代の選手たちと、もう1度戦って、J1の舞台で良いパフォーマンスをしたい」。ベテランの輝きに期待したい。【中島宙恵】