練習以外の部分でも同じだ。ヘルタでは原口ら選手約20人が、ゴールポストを片付けていた。仙台では練習後に主にコーチが担う。渡辺監督は原口に尋ねた。「あれをやらないと怒られるのか」。原口は「そういう雰囲気がある」。ほかのクラブでも、シュート練習で選手が外したボールを選手自らにとりに行かせるなど、日本ではスタッフがやっていることの一部を選手に任せていた。渡辺監督は「選手に(いい環境を)与えすぎないこと」と、真剣なまなざしで語った。

 試合風景も変わる。日本では、フィジカルコーチが試合中、アップ中の控え選手の近くにいて、盛り上げる。シャルケの試合に、フィジカルコーチはいなかった。原口は「それは当たり前。パフォーマンスが悪かったら、自分の責任ですから」と答えた。

 海外ではアップを選手に任せて、その様子で途中出場を判断する。日本では、フィジカルコーチが盛り上げても出場しなかった選手から、不満の声も上がる。なら、もう置かない。「結局、逃げ道をつくってしまう。責任も持たせたい。俺も信じてあげたい」。代わりにGKコーチをベンチ入りさせる考えを示した。

 原口や香川、内田が口をそろえて言った言葉が、背中を押してくれた。「最後は気持ちの問題」。指示されて動くのではなく、選手が自ら率先して動くことが重要なのだ。渡辺監督はこれまでを振り返り、「環境を与えることで、選手に言い訳の機会をつくりたくなかった。あえて、そういう状況をつくっていた」と反省した。浮上のヒントを得た渡辺ベガルタは、今日12日に動きだす。【秋吉裕介】