FC東京のFW大久保嘉人(34)が、移籍後初となる今季初ゴールで3-0の快勝に導いた。4季在籍した川崎フロンターレとの「多摩川クラシコ」の終了間際にゴール前に抜け出して左足で決めた。

 東京の新エースが古巣相手に待望の1号だ。後半ロスタイム、大久保嘉はFWウタカとのパス交換からゴール前に抜け出すとGKの動きを冷静に見極め左足で流し込んだ。「いつか入るとは思っていたけど周囲に言われるし、正直、焦りはあった。気持ちが楽になった」と胸をなで下ろした。

 前節のG大阪戦ではPKを外した。試合後にユニホームを蹴り、後にブログなどで謝罪していた。得点後はすぐにサポーター席に向かって両手を頭の上で合わせ謝罪のポーズ。「点を取って謝らないといけないと思っていたから。そういう時に限って相手がフロンターレで」。試合前の選手紹介では古巣のサポーターから大ブーイングを浴びた。「気づかなかった」と言うも、複雑な思いもあった。篠田監督は「いろいろあった中で結果を残すのは、男の中の男」と目を細めた。

 東京は2月の合宿から攻撃の連係面に課題を抱え、大久保嘉は思うようにシュートを打てていなかった。それでもMF橋本ら若手にパスの出しどころなど具体的な要求を口酸っぱく言い続けてきた。古巣との対戦を前に「相手の縦パスはファウルでいいから止めろ」と伝えていた。橋本も日本代表MF高萩も、激しい球際の攻防を制して川崎Fの攻撃を封じた。

 前節の完敗の後の完勝に大久保嘉は「どっちに転んでもおかしくない試合で1点目を取れたのはチームの成長。いつか自分たちの形をものにできる時がくる」と確かな手応えをつかんでいた。【岩田千代巳】