浦和レッズがFC東京を1-0で下し、3連勝で2位から今季初めて首位に浮上した。前半14分にカウンターからMF興梠慎三(30)が2戦連発となる決勝ゴール。今季6点目で、得点ランキングも並んでいた同僚のFWラファエル・シルバを抜いてトップに立った。

 ワンチャンスで仕留めた。自陣でラファエル・シルバがボールを持つと、興梠はDF3人の間を加速した。「ラファが前を向いたら、とにかくスペースを見つけて走ることを第一に考える」。背後からの地をはうパスを、DF丸山を背負いながら左足ダイレクトで合わせた。飛び出した日本代表GK林の手と丸山の足の間を射抜き、ゴール右隅に流し込んだ。技ありゴールに「あのコースしかなかった。あれが精いっぱい」と照れくさそうに笑った。

 興梠は激しく体を当てられても簡単には倒れない。この日のように体勢を崩されてもシュートは枠を外さない。FW武藤から「慎三さんは点も取れるしボールも収めてくれる」と信頼されるボディーバランスの持ち主だ。強固かつしなやかな体幹を、オーバーエージ枠で参加した昨夏のリオ五輪でも証明した。チームメートとの手押し相撲で無敗の“横綱”だった。押し勝つだけでなく、相手の押しを受け流して勝つこともあった。スポーツにおける駆け引きの中で、相手の力をいなす体の使い方を感覚的に知っており、一見無理な体勢でもシュートを決める。仲間から「あいつは天才」と言われるゆえんだ。

 長所が生きたゴールで、チームに勝ち点3をもたらした。後半は我慢の守備を強いられたこともあり笑顔は少なかったが、「年間を通して悪い時期はくる。そこで勝ち点3を取れるかが優勝につながる」と視線を落としはしなかった。かつて鹿島でリーグ3連覇に貢献した勝負師の前向きな姿勢もまた頼もしい。【岡崎悠利】