最下位の大宮アルディージャが首位浦和レッズを1-0で破る大金星で、今季初勝利を飾った。前日4月29日の非公開練習で試した守備時に5バックにする“奇手”が奏功。浦和の猛攻を耐え、柏から加入したMF茨田陽生(ばらだ・あきみ、25)が決めた1点を守り抜いた。最下位脱出はならなかったが、大きな勝ち点3が降格圏脱出のはずみになりそうだ。

 首位と最下位で対戦した史上初のさいたまダービーは、大宮に軍配が上がった。プロ野球のロッテや日本ハムなどより多い1試合平均3得点の攻撃力を誇った浦和を完封しての今季初勝利だ。ベテランMF金沢が相手のエースFW興梠を徹底マークし、守備時には金沢が最終ラインに加わる「変則5バック」の奇策がはまった。

 この戦術は試合前日に約1時間練習しただけ。一夜漬けでも関係ない。球際のプレーに気迫を込めて猛攻に耐えると、後半18分にMF茨田が移籍初ゴール。これが決勝点となった。茨田は「守備陣が体を張って頑張ってくれた。入ってくれと念じながら気持ちで押し込んだ。やっと大宮の一員になれた気がする」と笑った。

 開幕から約2カ月、勝利に見放され、4月21日のG大阪戦はクラブワーストの6失点で大敗。転機は同26日のルヴァン杯札幌戦で訪れた。0-1で迎えたハーフタイムにDF奥井が「球際からダメすぎる。自分たちはそこから変わらなくては何も始まらない」と仲間を一喝。終盤で追いつき勝ち点1を手にすると、練習から守備の意識が変化した。全選手が互いに遠慮することなくガツガツとぶつかっていった。途中出場のDF高山は「練習でバチバチといい雰囲気でできていたのが、今日につながったと思う」と振り返った。

 4月8日の神戸戦後に自身の進退責任まで口にした渋谷監督は「昨日しか準備できなかったが、選手がイメージを共有してプレーしてくれた。球際、ハードワークをした部分が良かった」と手応えを感じ取った。1勝したが最下位のまま。指揮官は「次に勝たないと意味がない」と6日の札幌戦に切り替えていた。【岩田千代巳】