かつてのエースが攻撃の要になる。アルビレックス新潟は11日、新潟医療福祉大との練習試合(45分×3)を聖籠町のクラブハウスの練習場で行い9-3で勝利した。DF矢野貴章(33)が本来の右サイドバックではなく、右サイドハーフで60分間プレー。2得点の起点になった。過去の新潟在籍時の10年、FWとして南アフリカW杯に選出されている。新潟は現在、最下位の18位で、総得点はリーグ2番目に少ない10点。呂比須ワグナー監督(48)は攻撃活性化の切り札として、大宮アルディージャ戦(17日・デンカビッグスワンスタジアム)での矢野のサイドハーフ起用を示唆した。

 攻撃の本能は健在だった。矢野が前線での起用にきっちりと応えた。「自分が起点になるプレーを意識した」。1本目の9分、右サイドから中央に入ってポストプレー。MF山崎亮平(28)の先制点につながるパスを出す。同43分には中央でボールを奪い、逆サイドに展開。MFホニ(22)のゴールの土台になった。

 自ら放った2本のシュートはいずれも外れたが、呂比須監督は「ボールをキープできるし、高さもある。コンディションが整えばもっと良くなる。次の大宮戦は問題ない」と話した。矢野は川崎戦(5月5日)で右大腿(だいたい)部を負傷。今月7日の練習から完全合流したばかり。そんな状態でも質の高いプレーを見せたことを、指揮官は評価した。

 今季名古屋から新潟に移籍。名古屋で開花した右サイドバックが、新潟でも開幕から不動の位置になった。もっとも、過去2度の新潟在籍時(06~10年途中、12年)はFWで、この期間に通算32得点を挙げている。南アフリカW杯では運動量豊富なFWとして日本代表入りした。呂比須監督に前線での起用を打診されると、「求められたことをやる」と受け入れた。

 新潟は現在18位。J2降格圏を脱出できずに最下位に沈んだままで、リーグ戦では2連敗中。14試合で総得点10点と、得点力不足に苦しむ。「あきらめずに戦うことが大切」と、矢野はそれをプレーで示す構えだ。1度は離れた攻撃的な役割。ひた向きに取り組むことで、チームの活性化に一役買う。 【斎藤慎一郎】