ヴィッセル神戸の元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(32)が、2得点を決める鮮烈のJ1デビューを飾った。ホーム大宮アルディージャ戦に先発し、後半4分に代名詞の左足シュートで先制点。同点とされた2分後の同17分には頭で勝ち越し弾を決め、3-1勝利の立役者となった。6日に来日して3週間。フル出場して世界の技と勝負強さを見せつけ、早くもサポーターの心をわしづかみにした。

 ひと振りで決めた。ポドルスキの実力は、本物だった。後半4分、ゴールに背を向けた状態から、MF松下のパスを振り向きざまに代名詞の左足シュート。ゴール右隅に突き刺さる衝撃的な初ゴールに、本拠地は一瞬静まり返った後、大歓声に包まれた。

 「最初の試合で1点が入って良かった。言葉にできないくらいうれしい」

 同点とされた2分後の同17分には、勝負強さを見せつけた。MF大森の右クロスに高くジャンプ。相手DF2人に挟まれながら、頭で合わせて勝ち越し弾だ。愛称ポルディの新エースが再び大歓声を一身に浴びる。「日本人が小柄だったので、プラスに働いたのかもしれない」。前半は仲間とかみ合わず、ほとんど好機がなかった。だが、後半はきっちり修正。ネルシーニョ監督も「チャンスがあれば決定力がある点取り屋であるということを見せた」とべた褒めした。

 待ち望んだ日だった。日本へ来て約3週間。W杯に3大会連続で出場した元ドイツ代表でも緊張はあった。「ある程度スターという立場で来て重圧がある中でも、力になりたい」。プロ意識は高い。大好物の肉を食べる時は高タンパクの神戸牛の赤身を選び、異国の地でストレスもたまる中、酒には手を出さない。神戸の10番として一刻も早くチームになじめるよう、努力を重ねてきた。

 この日は大好きなサッカー漫画「キャプテン翼」のキャラクターが印刷されたスパイクを使用した。後半に履き替えたが最初の舞台の相棒に選び、力を借りた。そして、あいさつ代わりの2得点。それでも納得していない。「まだまだシュートを打つチャンスがあるので次に進んでいきたい」。チームは2連勝。9位から巻き返しを期す神戸にとって、期待通りの超強力な助っ人だった。【小杉舞】

 ◆ルーカス・ポドルスキ 1985年6月4日、ポーランド・クリビツェ生まれ。2歳でドイツ・ケルンへ移住。03年ケルン下部からトップ昇格を果たし、06年にB・ミュンヘン移籍。アーセナル、トルコ1部ガラタサライでもプレー。W杯は06年から3大会連続出場し、ドイツ代表として130試合49得点。182センチ、83キロ。

 ◆J1デビュー戦で2発 神戸の元ドイツ代表ポドルスキが、29日の大宮戦(ノエスタ)で先発フル出場し2得点。J1リーグ戦初出場で2得点以上は、14年の大宮FWムルジャ以来、史上20人目。2得点以上に限らず、ドイツ国籍選手がJ1デビュー戦でのゴールは初。ちなみにJ1初出場で3得点以上のハットトリックは、93年の鹿島MFジーコ、08年の柏DF村上佑介と過去に2人。