静岡県の高校サッカーに新たな歴史が刻まれた。清水桜が丘がPK戦の末、4-3で静岡学園を撃破。2013年の開校(清水商と庵原が統合)以来3度目の決勝進出で、初優勝(清水商では12度)を飾った。史上12校目の「県代表校」として臨む全国選手権(12月30日開幕)の組み合わせ抽選会は、明日20日に行われる。

 耐えて、耐え抜いた先に最高の景色が待っていた。1-1で迎えたPK戦。先攻の清水桜が丘は6人目が決め、祈るように静岡学園のキックを見つめていた。後攻の相手が放ったシュートはゴール上に外れる。瞬間、選手たちは雄たけびを上げながら走りだした。13年の統合以来、決勝は3度目の挑戦。初の栄冠を手にし、大滝雅良監督(66)も「奇跡ってあるんですね。選手がよく頑張りました」と小さく笑った。

 1年FW松永颯太がチームを救った。前半30分に失点。それまで決定機すら作れず、重苦しい雰囲気も流れた。だが、同ロスタイム、味方が放ったシュートに松永が反応。「狙っていました」とGKがはじいたボールを左足で押し込んだ。ワンチャンスで試合を振りだしに戻した。

 この日は、MVPに輝いたMF白井海斗主将(3年)が封じ込まれた。だが、その展開も想定内。選手には悔しい経験から学んだ揺るぎない自信があった。今季のプリンスリーグ東海で一時5連敗を喫した。チーム崩壊の危機に陥り、守備の仕方について選手間で口論になることもあった。そんな中、白井主将は1人で責任を背負い、毎日グラウンドに最後まで残って自主トレを重ねた。その姿を見てチームの意識が変化。MF松下祐也(3年)は「今までは(白井)海斗だけに頼っていたけれど、あいつを助けてやろうという気持ちで1つになりました」と振り返った。

 「白井頼み」だったチームは変わった。今大会は6試合で1失点。伝統の堅守を武器に静岡学園の県3冠も阻止した。白井は言った。「みんなには感謝の気持ちしかない。本当に最高のチーム。全国でも一戦必勝で戦います」。

 初優勝。だが、清水商時代を含めると6年ぶり13度目だ。校名変更後もユニホームの左胸には、全国選手権を3度制覇した清水商のエンブレムが付いている。名門復活! 激戦の静岡を制したプライドも胸に、全国でその名をとどろかせる。【神谷亮磨】