福島ユナイテッドFCは、東日本大震災から7年の「3・11」にホームで行われた開幕戦で、逆転勝利を収めた。

 前半7分に先制を許すも、同30分過ぎから主導権を握り始め、後半3分にDF宇佐美宏和(30)が同点弾を挙げた。同40分にはMFニウド(24)が左足を振り抜き、逆転に成功した。

 鈴木勇人代表取締役(45)は「応援の力が非常に大きかった。特別な日に、この場所で勇気と感動を与えたかった」と語った。7年前から、復興のシンボルとして戦ってきた。12年にはJFL昇格と天皇杯16強を達成。その後、J3に昇格し、サポーターを熱狂させ続けた。今回も、その責務を果たした。

 だが、選手の入れかわりは激しい。今年は10人もの新加入選手が加わった。11年からクラブに所属していた選手は、DF岡田亮太(29)MF石堂和人(35)の2人になった。鈴木氏は、選手の入れ替わりによる震災の風化を懸念しており、直前の練習前に選手へ「このクラブの紆余(うよ)曲折を徹底的に」伝えた。

 その場で「このクラブは自己犠牲の精神なんだ。『あいつのために』と体を張ってくれ」と熱く語った。震災直後、7人もの退団者が出て、クラブは解散危機に直面した。ホームスタジアムに隣接する体育館に、1000人もの被災者が避難生活を送った。そうした中でも、残った選手やスタッフは、炊き出しや、サッカー教室に参加。こうした活動が「このクラブの原点」との信条を持っている。

 この試合の決勝ゴールから、自己犠牲の精神を感じ取った。左クロスをファーサイドで岡田が頭で落とした。ボールはゴール前へ転がったが、ニウドの前にいたMF樋口寛規(25)がつぶれ役になり、シュートコースをつくった。「ニウドをフリーにして後ろに任せた。これぞ自己犠牲の精神。福島のために、みんなが戦ってくれた」とたたえた。

 試合後の午後2時46分。震災発生時刻に合わせ、スタジアムでは1分間の黙とうが行われた。鈴木氏は、悔しい敗戦直後にもかかわらず参加した群馬の選手やサポーターに感謝。そして「7年間の出来事が、思い浮かんできた」と振り返った。特別な日の開幕戦で、クラブの存在意義を再認識した。これからも、歩みを止めず、J2昇格へ突き進む。