アビスパ福岡MF城後寿(31)が、今季初先発を果たした東京ヴェルディ戦で、両軍2位タイ、福岡では最多タイの3本のシュートを放つなど気を吐いた。

 長崎・国見高を卒業し、05年に入団から一筋の“アビスパのキング”だが、17年は26試合に出場も先発は2試合、18年も開幕からの4戦中、3戦がベンチ入りにとどまり、出場は3月3日の京都サンガ戦に途中出場した14分間のみと、ここ2シーズンは定位置を失っている。

 その中、井原正巳監督(50)から、ボランチで初先発のチャンスを与えられた。「『とにかく自分の良さを出していこう』と試合前に言われました。日ごろから取り組んでいるポジションなので、特に不安がない。『飛び出していくところだったり、ハードワークを出していければ構わないので、そういうプレーを出してくれ』と言われました」。監督の言葉を胸に、中盤の深い位置からドリブルでグイグイと持ち上がった。前半45分には、ペナルティーエリア内に進入し、GK上福元直人との1対1からシュートを放つも弾かれ、両手でピッチをたたいて悔しがった。「中にフリーの選手がいたみたいなので、自らシュートに持ち込んだので必ず決めきらないといけないシーン。決めたら、また違った景色も見えてきたと思う。元々、FWでプレーしていたので、決めきることがないと、また次のチャンスをもらえない」と自らにダメ出しした。

 一方で「ボランチからあそこまで入れたことは、持ち味はある程度、出せたと思います。あのチャンスで決めきることが出来れば、また違った展開になった」と手応えも得た。「2、3列目から飛び出していけば相手の脅威になると思う。決めきれないと何もつながらない。監督の目に映るようなプレーが出来れば、またチャンスはもらえると思うので、次のチャンスは、しっかりものにしたい」と気持ちを新たにした。

 井原監督は試合後の会見で「ボランチでの先発は初めてだと思う。練習、練習試合では試した。ボールに関わりながら、前に出て行くプレーが攻撃のプラスになると思い起用した。(後半2-2と)京都に追いつかれて以来、出場機会はなく、悔しい思いがあったと思うが、期待に応えるプレーはしてくれたと思う」と城後を評価した。

 対戦相手の東京Vとは、因縁があった。17年10月28日に同じ味の素スタジアムで行われた第39節で対戦。城後はフル出場したが0-0で引き分け、前節まで自動昇格圏内の2位だったが、ロアッソ熊本に2-0で勝ったV・ファーレン長崎にかわされて3位に転落した上、同日に試合がなかった首位湘南ベルマーレが戦わずして昇格を決めた。福岡はその後、4位に順位を落としてJ1昇格プレーオフに回り、同11月26日に行われたJ1昇格プレーオフ準決勝は1-0で完封勝ちも、12月3日の決勝では3位の名古屋グランパスに0-0で引き分け、昇格を逃した。

 この日は、あいにく雪だった。城後は「(東京V戦は)接戦にもなりますし、ここでやる時は天候もあまり良くない。今日に限っても、試合前にヴェルディの関係者を含めて雪かきとかしてもらって試合を運ぶことが出来た。普通にサッカーが出来ることが当たり前じゃなくて、そういう方々がいるんだと、もう1回、頭に入れて感謝の気持ちでプレーしたい」と口にした。そして「自分としては結果は出なかったですけれども、今日出て、やはり試合に出ることが、また楽しいことだと思ったので、またチャンスをもらえた時にいい準備をしておきたいと思います」とサッカーをやることの喜び、素晴らしさを口にして会場を後にした。【村上幸将】