湘南ベルマーレの真壁潔会長(56)は6日、フィットネスクラブを運営するRIZAP(ライザップ)グループとの合同会見の中で、同社の連結子会社となることを決断した背景には、16年に浦和レッズに移籍した日本代表MF遠藤航(25)ら下部組織からトップに昇格した選手が、条件のいい他クラブから引き抜かれる中、涙ながらに移籍していったことが大きかったと吐露した。

 真壁会長は質疑応答の中で、ベルマーレ平塚時代の98年にFW呂比須ワグナー、MF中田英寿、GK小島伸幸が日本代表、DF洪明甫が韓国代表としてW杯フランス大会に出場した中、親会社のフジタが経営危機に陥って銀行の管理下に置かれ、翌99年6月に経営から撤退した過去がありながら、今回、再び親会社を持つ決断をした理由を問われた。

 同会長は「我々のクラブから、多くの選手が巣立っていきました。非常に残念なようなうれしいような結果」と、他クラブから選手の引き抜きに遭っている現実を、あらためて口にした。その上で「特にうちで小、中、高と育っていった選手を当然、引き留めようとするわけですけど、驚くほどJ1の平均年俸とは差がある。出さざるを得ない。クラブのトップですから、最後は会って話をするわけですけど、ほとんどの子が泣きだしてしゃべれない…次のステップに行くのに、泣いてしゃべれないんですよ」と声を震わせて吐露。移籍していった大多数の生え抜き選手たちが、湘南への愛と選手としての今後の板挟みに苦しみ、苦悩の末、移籍していった現実を明かした。

 そして、16年に浦和レッズに移籍した、日本代表MF遠藤航(25)との会話を実例として挙げた。

 真壁会長 遠藤航は(16年リオデジャネイロ)オリンピック代表だったこともあって、中東から携帯に電話してきました。「レッズに行かして下さい」の「レッズ」が口から出ないんですよ。電話の先で、ずっとしゃべろうとして「レッズ」って、言えないんですよ。それを待っているのも、かわいそうですから「レッズだろ…分かっているよ。頑張れ。お前が日本の中盤を背負っているんだから、とにかく今は集中しなさい。帰ったら飯でも食おう」と言いました。

 真壁会長は「うちのクラブが地域の子たちを育てた結果、羽ばたかせるのに、過去の中田英寿のように世界に行って大成功した選手がいるのに、今、このままでは同じことを繰り返す。子どもながら一生懸命、考えて長くお世話になったクラブを出て行く時に、泣いて話せない現状があって、果たして本当のプロクラブでしょうか?」と涙で声を詰まらせながら訴えた。そして「市民クラブとして応援いただいているが、世界で市民クラブと知られているクラブが、草創期から市民だけで成功させたかというと、全くそうではない。日本のプロ野球には広島カープという、素晴らしい球団がある。でも(親会社の)マツダさんがいなくて、ここまで来たでしょうか? 現実を見なくてはいけない」と強調した。【村上幸将】