昨季王者の川崎フロンターレが、MF中村憲剛(37)FW大久保嘉人(35)のアベック弾などで鹿島アントラーズに4-1で快勝し、4戦連続未勝利のトンネルを抜けた。常勝軍団鹿島を相手に、優勝の原動力となった「球際」「前への意識」を見直して臨み、今季最多の4得点。ベテランコンビが躍動し、モヤモヤを吹き飛ばす快勝となった。

 1点差に追い上げられた直後の後半20分。中村は、ペナルティーエリア内で鹿島のDF小田がGKへのバックパスを出す直前、一瞬迷った表情を浮かべたのを見逃さなかった。

 「深い位置でも前からプレス」はチームの鉄則だ。「行ける」と判断した中村は猛ダッシュで小田のパスを狙って走り込み、そのまま右足でGKの股を抜いた。「チームのやり方を貫いた結果、ボールが転がってきた。自分にとっても大きな1点」。開幕戦以来の得点に笑みをこぼした。

 昨季、リーグ最多の71得点と攻撃力を誇ったチームだが、直近4試合でわずか2得点。連動性のある崩しも影を潜め、昨季王者が迷路に入り込んでいた。さらにエースFW小林、司令塔のMF大島がけがで離脱するアクシデントも重なった。その中で迎えた常勝軍団・鹿島戦。選手も鬼木監督も「ここで勝てば必ず乗る」と思いは1つだった。

 ミーティングでは再び、優勝をつかんだ昨季の原点である「前への気持ち」「球際のハードワーク」を見つめ直した。今季最多4得点での勝利に、中村は「ここで勝てないと落ちていくしかないという状況だった」と本音をこぼし「ベタだけど気持ちは大事。ベースは闘うところ。不変のチームスピリットを思い起こせたいい相手だったし、いい結果だった」と口にした。

 後半36分には、今季復帰した大久保がダメ押しの4点目。役者が躍動しての「等々力劇場」にファンは酔いしれた。中村と大久保のアベック弾は今回が12回目。さらに10勝2分けと不敗記録も更新した。優勝の原点に立ち返ったフロンターレが上昇気流に乗ってきた。【岩田千代巳】