日本勢で唯一、勝ち残る鹿島アントラーズが後半ロスタイムのゴールで水原(韓国)を3-2で下して、ホームで先勝した。クラブ初の準決勝第1戦は立ち上がりに2失点したが、後半39分に追いつくと、同48分に今季復帰したDF内田篤人(30)が鹿島で8年半ぶりとなる劇的な逆転弾を放った。日本勢で初めて準決勝第1戦を勝って折り返し、悲願のACL初制覇へ前進した。第2戦は24日に敵地で行われる。

歓喜の絶叫が、スタジアムに響いた。もみくちゃにされたのは背番号2。鹿島伝統の強さを知り、歴史の重みを知る。その男が、最後の最後にやってのけた。

2-2の後半ロスタイム。FKのこぼれ球が内田の前に転がってきた。混戦の中で無理やり放ったシュートが、再び目の前に来た。2度目は冷静だった。「普通に打ったら入らないと思ったんで、ちょっとアウトにかけた」。ボールは転々。ゴール近くにはオフサイドの恐れの山本がいて「脩斗さん、触るな」。10年3月30日のACLペルシプラ戦以来8年半ぶりの復帰初ゴール。ただ、喜びより「早い時間帯に2失点して説教です」。内田節だった。

まさかの立ち上がりだった。開始6分で2失点。前がかりに来た水原に虚をつかれ、2つもアウェーゴールを許した。誰もが焦る。だが、内田は違った。「後ろの選手を集めて『1度しっかり守ろう』と話した。点を取らなきゃいけないけど、そこは1回我慢しようと」。いい守備から、いい攻撃-。そのリズムが最近の鹿島の強さ。それを取り戻させて逆転へと導いた。

4月17日にホームで行った水原との1次リーグ最終戦。引き分けでも1位通過の中、過密日程や底上げを図る意図から出場機会の少ない選手を投入して、0-1で敗れた。DF昌子が嘆いた。「『誰が出ても鹿島』が鹿島の強みなんだから、何が何でもレギュラーを奪ってやるという強い気持ちをもう少し出すべき」。

半年後。公式戦6連勝で迎えた今季3度目の水原戦を前に、内田は当初を振り返り「その時から監督が言っていること、チームがやっていることは変わらない。浸透してきたんじゃないか」。背中で語るベテランに全体が追いついてきた。

日本勢が準決勝第1戦で勝ったのは初めて。「次につながっただけだよ」。ただ「この勢いで『よっしゃ、行こうぜ』と勝ち上がっていくのも大事」とも。そう、内田は戦い方を知っている。【今村健人】