サッカー元日本代表のGK川口能活(43)が4日、今季限りでの現役引退を所属のJ3SC相模原を通じて発表した。14日に会見し、12月2日のホーム最終戦(対鹿児島)の試合後、引退セレモニーを行う。

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「能活さん、ちょっと出てきてもらえませんか?」。08年5月ごろ。川口は、協会関係者に浜松市内のホテルへ呼び出された。当時所属した磐田の練習後、向かった先に日本代表岡田監督が待っていた。Jリーグ視察のためではない。戸惑いながら席に着くと、代表での正GK剥奪を伝えられた。理由を聞いて言葉を失う。

「川口能活から輝きがなくなったからだ」

直後の代表戦から定位置はなくなった。プレーでのことなら納得がいくが、輝きという抽象的な答えに「とにかくつらかった」。超がつくエリート街道。川口=代表GKだった。だが、ふくらはぎ肉離れに右脛骨(けいこつ)骨折。日の丸からも遠ざかり、代表戦をテレビで見た長女には「何でパパがいないの?」と泣かれた。

「必ず見返してやる」。でも代表どころか、半年以上実戦を離れたW杯南ア大会メンバー発表前日「もうさすがに厳しいよ」と初めて弱音を聞いた。だが諦めたはずがサプライズ選出。第3GKの立ち位置だった。直後、スポンサーあいさつのため乗り込んだJR東海道線で、つり革を握りながら言った。「自分の立場は分かっているよ」。プライドを捨て、いぶし銀に光ることを受け入れた決意。そんな川口能活の人間くささが好きだった。【08~10年磐田担当=栗田成芳】