元日本代表監督の岡田武史氏(62)がオーナーを務めるFC今治が、来季のJ3昇格(Jリーグ入会)を逃した。成績要件となる年間4位以内に次ぐ5位でキックオフ。(1)今治が勝ち、4位ソニー仙台FCが引き分け以下に終わる(2)今治が引き分け、ソニーが敗れて得失点差で上回る、の2つが逆転の条件となっていたが、今治が引き分け、ソニー仙台が勝ち、満たせなかった。

ほぼ満員の4805人が詰めかけた本拠、ありがとうサービス.夢スタジアムで迎えた最終節。まずは大前提の勝利を目指した今治だったが、開始3分で先制点を許してしまう。右サイドを崩されての折り返しからミドルシュートを決められた。一方のソニー仙台はFCマルヤス岡崎相手に、前半27分までに3点をリードする猛攻。前半終了時点で今治が0-1、ソニー仙台が3-0と苦境に立たされた。

後半が始まると夢スタのスコアが動く。後半11分、今治MF三田尚希(26)が右サイドからのボールをトラップ。左足で狙いすましたシュートをゴール左上に決めた。日本代表MF柴崎岳(26)と青森山田高で同期だったアタッカーの一撃で、今治が追いついた。

しかし、最後まで追加点は奪えないまま、試合終了の笛が鳴り、スタジアムは静まり返った。ソニー仙台の会場は後半は動きなく、3-0で終了。最終的に勝ち点3差をつけられての5位で、岡田FC今治の4シーズン目は終わった。

今治は2試合前の第13節まで6連勝で年間4位に浮上。ところが、王手をかけていた第14節でMIOびわこ滋賀に1-2で敗れ、昇格圏外の5位に転落していた。岡田氏も「昇格を逃した要因は前節にあると思っています」と認める通り、致命的な黒星として、最終節に重くのしかかった。

それでも望みをかけていた。今夏、吉武博文前監督(58=元U-17日本代表監督)の退任を受けて、コーチから昇格した工藤直人監督(36)は前節の敗戦後「あと1試合、自力(昇格)はなくても勝つしかない」と神妙に話し、ゲーム主将のMF上村岬(27)も「ホームでしっかり勝つ。あとは神様が見てくれる」と他力の昇格を諦めていなかったが、最終節では重圧をはね返して勝ち切ることができず、肩を落とした。

試合前、スタジアムで支援者に頭を下げ続けていた岡田氏は、前半が始まるとバーベキュー席がある高台に登り、1人で微動だにせずに観戦した。いつもの場所から一喜一憂しない念を送ったが、夢へ足踏み。試合後は整列の前に立ち「約束を果たせなくて申し訳ありません。ただ、工藤監督たち若い世代が成長してくれた。FC今治は立ち止まるわけにはいかない。長い歴史の中で、こんな苦しい1年があった、と思えるような1年にしないといけない」と、感謝と、この経験を来季への糧とする覚悟を強調した。日本最高峰の指導者が、クラブ経営者としてJリーグの舞台に舞い戻る目標は、JFL3シーズン目となる2019年に持ち越された。