J3最終節で、今季で引退するSC相模原の元日本代表GK川口能活(43)が現役ラストマッチを完封勝利で飾った。ホームの鹿児島ユナイテッドFC戦で3カ月、リーグ13試合ぶりに先発出場。最多1万2612人の観衆の前で、変わらぬスーパーセーブを連発した。ともに日本代表GKの座を争った名古屋GK楢崎正剛(42)もサプライズで駆けつけ“炎の守護神”の引退に花を添えた。

25年の現役生活を締めくくったのは笑顔だった。完封勝利を告げるホイッスルにやりきった表情で両手を広げ天を仰いだ。駆け寄ってくるチームメートを見ると、涙がこぼれた。

移籍3年目の今季は厳しいシーズンだった。序盤4試合に出場したが、2分け2敗で計10失点。久々の出場となった9月の鳥取戦では屈辱の7失点を喫し「キャリアの最後になるかも」とさえ思った。それでも、腐らず練習に励んできた。

最後に川口らしいスーパーセーブを連発した。前半、至近距離からのシュートを左手1本ではじくと、後半には1対1の局面で目の前で打たれたシュートに素早く反応。こぼれ球に詰められたが、体を投げ出し守った。FWガブリエルのPKによる1点を守り抜き「キーパーにとって理想のスコア」で終えた。

引退セレモニーには長く代表守護神の座を争い、ともに戦ってきた盟友の名古屋GK楢崎もサプライズで駆けつけた。互いに意識し、関係がギクシャクしたこともあったライバルだが、今は「よっちゃん」「正剛」と呼び合う。「サプライズで来たよ」と言う楢崎に「泣かせるなって」と応じた。「僕にとって特別な選手。彼がいなかったら代表でプレーできなかったし、この年までサッカーを続けることはできなかった。まだ(現役を)続けてください」。熱い思いを託し、ガッチリ抱き合った。

東海大一中(現東海大翔洋)、清水商(現清水桜が丘)とエリート街道をひた走り、各世代で代表に名を連ねGKの先駆者として海外でもプレー。96年アトランタ・オリンピックではブラジル相手にファインセーブを連発し「マイアミの奇跡」を演出。その後は楢崎とともに4度のワールドカップも経験した。04年アジア杯準々決勝では神懸かり的なPKセーブで優勝に貢献。歴史に名を刻む偉大なGKだった。

引退後は指導者の道を歩む。具体的な進路は「まだ決まっていない」というが、段階的に、監督を務めるために必要なライセンスも取得中。次世代の育成に貢献するつもりだ。現役引退のホイッスルは、新たな人生の始まりを告げる音でもあった。【杉山理紗】