大腸がんのため11月23日に63歳で死去したJ1清水エスパルスの副社長兼ゼネラルマネジャー(GM)、久米一正氏の通夜が3日、東京・増上寺で営まれ、約1000人が訪れた。

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とにかくウインクが上手だった。百戦錬磨の強化担当。Jリーグの移籍情報からマスコミ各社の人事まで、久米さんは何でも知っていた。わけを聞いても「僕には忍者がいるからね(笑い)」とけむに巻かれたが、情報戦でいつも誰よりも先を行っていた。移籍情報の取材でも、簡単には「そうだ」と言ってもらえなかった。ただ、懸命にぶつかれば、必ず応えてもらえた。情報が正しければウインク。久米さんの厳しくも優しい目に、何度も救っていただいた。

日立やトヨタ、大企業のクラブで親会社の首脳からも信頼を得ていた。日立のサラリーマン時代に身に付けたプレゼン資料作成術はピカイチ。会議ではまず資料で興味を持ってもらい、最後に「久米にだまされてみてください」。この決めゼリフでだめ押し。数々の取引をまとめた。まだ63歳。こんな早いお別れは信じたくない。今でも、久米さんに「だまされている」、そう思いたいが、甘ったれるなと怒られそう。久米さんは湿っぽいのが嫌いだった。【八反誠】