湘南ベルマーレの曹貴裁監督(50)が電撃退任することが11日、濃厚になった。コーチングスタッフや選手へのコンプライアンス(社会的規範やモラルの遵守)の問題が浮上。今後、Jリーグの調査も入るという。

12年から当時J2の湘南を指揮し、走る「湘南スタイル」を確立。降格、昇格を繰り返しながらも昨季はルヴァン杯のタイトルを手にしたクラブの象徴がピッチを去ることになる。チームはこの日、アウェーでジュビロ磐田に3-2で逆転勝ちし11位へ浮上した。

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湘南を指揮して8年目、曹監督が退任することになりそうだ。複数の関係者によると、昨季から曹監督の指導を受けたコーチングスタッフや選手がメンタル面の支障をきたす事案が続いていた。情報はJリーグにも入っており、調査が入る予定になっている。

チームは11日、アウェーで磐田に3-2で逆転勝ちを収め11位に浮上。2年連続J1残留も現実味を帯びてきた。ただ、試合後の会見で自身について触れることはなかった。その裏で電撃退任となれば、クラブを揺るがす大事態となる。

曹監督は12年に当時J2の湘南の監督に就任。同時期に、クラブはベテラン選手獲得でなく、若手を1から育てる方針へと転換した。走力と精神力を鍛える育成方針で、MF遠藤航(シントトロイデン)、MF永木亮太(鹿島)ら無名選手が日本代表へと羽ばたいた。主力選手が他クラブに引き抜かれる影響で2度の降格も経験したが、高卒、大卒の新人を積極的に起用することで、有望な若手を次々と育て上げた。昨季は東京オリンピック(五輪)世代のDF杉岡大暉らを軸にルヴァン杯のタイトルを獲得した。攻守にわたるハードワークが持ち味。そんな「走る湘南スタイル」を定着させたクラブの象徴的な存在だった。

最近では、ロッカールームで各選手が声を荒らげて本音をぶつけ合うミーティング映像などを収録したDVDが異例のヒットとなった。だが今後の調査次第となるが、昨今はコンプライアンス違反が世間で厳しくなっているだけに、事実が認定されれば社会的な問題へと発展することになる。クラブの大きな功労者で看板となる人物が、まさかの事態でシーズン途中の退任を避けられなくなった。