日大藤沢が夏の日本一・桐光学園を1-0で破り、5年ぶり5度目の全国大会出場(12月30日~来年1月13日、埼玉スタジアムほか)を決めた。

殊勲の男は「26番」浅野葵(3年)だった。後半9分、左サイドからMF植村洋人(3年)が巧みなドリブルで1人目、2人目とかわしてゴール前をえぐった。タイミングを合わせてゴール前へ入ってきたMF浅野へ丁寧なパスが通る。浅野は右足ワンタッチで押し込んだ。均衡を破った。

焦りがにじむ桐光学園が終盤、単調な攻撃になる。日大藤沢のハードワークは上がる。4分間のロスタイムも難なく乗り切り、危なげなく試合の幕を下ろした。鮮やかなピンク色のユニホームが緑のピッチで舞う。季節外れの桜が、三ツ沢に咲いた。

決勝点の浅野は、興奮を抑えられなかった。「ドリブルで抜いてくるのが分かったので、ゴール前へ入るだけでした。ゴールの瞬間は覚えていません」。背番号が示す通り、大会前まではサブ組。それ以前の夏はBチームにいた3年生だ。

今大会の決勝トーナメント前、攻撃的MFのレギュラー選手にケガ人が続出した。本来ボランチだったがリーグ戦での活躍が認められ、今大会の決勝トーナメントからレギュラーに抜てきされた。すると準々決勝の橘戦(1-0)でも値千金の決勝ゴール。なくてはならない存在となり、大事な決勝の舞台でも再び決勝点を挙げた。

「ここまでの努力が報われました」。浅野はレギュラーでなくても腐らず、自主練習を続けてきた。居残りでシュート練習を繰り返し、横浜市内にある自宅に戻ってからも「より具体的なイメージを持って」練習に明け暮れたという。そんな努力は、チーム内でデータを取得している走行距離の数値に表れた。佐藤輝勝監督は「誰よりも(浅野が)試合で走っていた。陰で努力していたと思います」。食が細く、夏場の体調管理にも苦しんだというが、実りの秋を迎え、チームを支えられるたくましい選手へと成長した。

26番で臨んだ今大会、当初この背番号を見て「最悪、だっせーなってみんなから言われました。でも、この番号をつけてからよく点が取れるようになりましたし、全国でも」とほくそ笑んだ。

浅野に象徴されるように、日大藤沢は総合力の高さで、スーパーエース西川潤を擁するインターハイ王者・桐光学園を下した。毎日積み上げた練習は、うそをつかなかった。「目標は日本一なので、まだ何も成し遂げていません。まだまだこれからも努力します」。浅野の快活な笑顔が輝いた。