藤枝順心(静岡)が昨夏の全国総体準優勝の日ノ本学園(兵庫)をPK戦の末に4-3で退け、2年ぶりの4強進出を決めた。0-0で突入したPK戦でGK松井里央(3年)が、相手の1人目をセーブ。流れを呼び込み、優勝候補との接戦を制した。今日7日にノエビアスタジアム神戸(神戸市)で行われる準決勝では、修徳(東京)と対戦する。

藤枝順心GK松井が、右手の拳を天高く突き上げた。0-0で迎えたPK戦、日ノ本学園1人目のキックに鋭く反応。右へ踏み切り、コースを狙ったシュートを両手で止めた。「体を張っていたみんなのためにも『自分が止めて勝つ』という思いだった」。最大の見せ場で流れを引き寄せると、3人目もゴールの枠を外した相手に対し、藤枝順心は4人が成功させた。

事前の準備が実った。日ノ本学園が2回戦で行ったPK戦のデータを分析。ミーティングで頭にたたき込んだ。松井は「1人目のキッカーは、確実な方を選択すると思った。データ通りだった」とニッコリ。冷静な判断も加えた好セーブで、主役の座を射止めた。

守護神と同様、チームも力強さを証明した。1回戦で敗退した昨年、前半1分に攻撃の起点となるFW池口響子(当時2年)が負傷退場。序盤で狂った歯車を修復できず、PK戦で敗れた。この日も、前半終了後にDF井手ひなた(1年)が負傷交代。センターバックの一角を欠いたが、最後まで動揺することなく無失点で耐えた。多々良和之監督(55)も「嫌な予感もしたが、不測の事態でもみんなで声をかけ合ってできるチームになった」と、手応えを口にした。

優勝候補筆頭との大一番を制し、2年ぶりの頂点までは残り2勝。王座奪還がくっきりと見え始めたが、松井は「決勝を見ずに、準決勝に向けて良い準備をしたい」と笑顔をしまった。気を引き締め、足早に宿舎へ向かったイレブンに死角はなさそうだ。【前田和哉】

◆松井里央(まつい・りお)2001年(平13)10月20日、富山県生まれ。小学1年から富山市のFCマルーンでサッカーを始める。中学時代に富山レディースSCでプレーした後、藤枝順心高進学。世代別代表候補に度々選ばれ、18年にはU-17日本女子代表に入った。身長166センチ。