名場面に名言あり。サッカー界で語り継がれる記憶に残る言葉の数々。「あの監督の、あの選手の、あの場面」をセレクトし、振り返ります。

「打ちのめされたところから、またトレーニングの1歩が始まるんです」。

19年1月5日。冬の風物詩、高校選手権の準々決勝。矢板中央(栃木)のアドバイザーとしてベンチに入った古沼貞雄が試合後につぶやいた。

相手は毎年、優勝候補に名があがる青森山田。先制点を奪うも、自慢の堅守を破られた。試合終了の笛を聞いてピッチに倒れ込む選手たちを、ベンチから立つことなくじっと見つめていた。

帝京(東京)を率いた1965年から2008年までで選手権優勝6度、準優勝を3度。高校総体でも3度優勝と、一時代を築いた名伯楽だ。

80歳を超えた今も、ピッチでボールを蹴ることもある。現在はアドバイザーとしてだが、指導者として高校選手権に挑戦し続けて今年で60年目となる。矢板中央は前回大会で3度目の4強に進出。その先の決勝、そして頂点へ、古沼氏も変わらない姿で現場に立つ。