新型コロナウイルスの感染拡大で中断していたJリーグがいよいよ再開する。J1は7月4日、J2は今月27日に再開、J3は開幕となる。当面、無観客試合となるJリーグの見方も変わる中、ウイルスと共存しながら楽しむ観戦法に着目。「さあリーグ再開! Jのミカタ」と題し、新しい応援スタイルを紹介する。第2回は段ボールサポーターに迫る。

   ◇   ◇   ◇

人が入れないなら、人以外で。無観客試合でのリーグ戦開催を前に、各クラブでは客席に立ち入れないサポーターの気持ちを届けようと、さまざまな方法でアプローチを試みている。サポーターの声援、拍手を届ける「リモート応援」が聴覚なら、次は「段ボールサポーター」が選手の視覚に訴える。

無観客で空席となる客席に顔写真などを貼った段ボール製の人型サポーターを販売して配置する。少しでも通常開催に近い雰囲気を作ろうという試み。会場で応援できないサポーターにとっては参加意識が高まり、クラブにとっては減少する入場料収入の補填にもなる。主な手順としては、購入した人型段ボールに顔写真などを貼ってクラブに返送、写真データのみを送ってクラブスタッフが貼付を代行するなどして、客席に「段ボールサポーター」が並ぶ。クラブごとに対応は異なるが、少しでも選手を後押ししたい気持ちは同じだ。

Jリーグから無観客でのリーグ戦再開が発表された5月29日の翌30日にはJ2新潟が地元企業と協力し、撥水(はっすい)加工を施した人型段ボール「アルボールくん」の発売を発表した。使用後にハンガーとして再利用できるようフック状の切り込みも入れ、1体1500円。クラブ担当者によると販売状況は好調で「当日は多くのサポーターの方々が並ぶことになると思います」と力を込めた。

今月2日にはJ1鳥栖が、パッケージの製造、販売などを行う「サガシキ(本社・佐賀市)」とタイアップした段ボールサポーターの販売を発表。5月16日から再開したドイツ・ブンデスリーガのスタジアムに段ボールサポーターが並ぶ光景を目にしたサガシキの枝吉宣輝社長が「ピンときました」と製作をクラブ側に打診。約1週間で試作品まで作り、発表に至った。専用アプリで撮影した写真を送ると、同社の工場でフィルム加工した大型耐水紙に顔写真などが印刷され、完成する。枝吉社長は「もともとの製造ノウハウがあったからできた。ぜひ多くの方に利用してほしい」と話した。

他クラブも追随しており、J1大分も12日にクラウドファウンディング形式での段ボールサポーター販売を発表。段ボールではないが、J2松本は発泡スチロールと同じ素材を使ったスチレンボード製人型サポーターを置き、J1仙台は客席にサポーターが購入したクラブマスコットの「ベガッ太」などのぬいぐるみを置く企画を行う。

コロナ禍で生まれた新たな応援スタイル。こうした取り組みはドイツをはじめとする本場の欧州サッカー界でも積極的に導入されており、顔写真入りの段ボールサポーターらが客席から熱い視線を送っている。足は運べなくとも、サポーターたちの魂は、いつもすぐそばにある。【松尾幸之介】