冬の風物詩ともいわれる全国高校サッカー選手権の開幕を、心待ちにしている人たちがいる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今夏開催予定だった全国高校総合体育大会(インターハイ)が史上初の中止。高校野球も春、夏ともに甲子園の中止が決定した。現時点でサッカーの選手権は開催の方向で検討中だが、正式決定はしていない。高校サッカーで最高の舞台に立つことを夢見て、選手は準備を進めている。日刊スポーツでは関西の強豪3校を取材。3年生にとっては、ラストチャンスとなる夢舞台への思いを聞いた。

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興国はプロを目指して門をたたく部員が多い。今年は既に3年生のMF樺山諒乃介、DF平井駿助、GK田川知樹の3選手がJ1横浜F・マリノスに内定。FW杉浦力斗はJ2ツエーゲン金沢に内定している。

一方で、インターハイが中止になった今、遅咲きの3年生は自分をアピールする場が少ない。

MF豊田柊弥(3年)はそれまで4番手のセンターバックだったが、昨秋にボランチに変更した途端に才能が開花した。内野智章監督(41)によれば、身長184センチと大柄にもかかわらず、ボールの扱いがうまいという。前回の選手権では同じポジションにJ2金沢入りしたMF田路耀介(19)がおり、出場機会はなかったが、今年は中心選手の1人として期待されている。チームの自粛期間約3カ月は試合を想定し1人で45分×2の走り込みを行うなど努力を重ね、インターハイはアピールの場と捉えていた。豊田は「今年は絶対に活躍したろうと思ってたので、(中止は)すごく悔しいです」と話した。

表現できる場を増やそうと内野監督は、静岡学園、帝京長岡(新潟)、昌平(埼玉)、尚志(福島)、桐光学園(神奈川)など強豪校を集めた「アルティマリーグ」を計画。8月に興国ー静岡学園で、開幕戦(J-グリーン堺)をする予定だ。選手権については選手らがツイッターで「#やろうぜ選手権」を発信。1人1人が感染予防をすることで、開催の後押しにしたい気持ちを添えた。

豊田は夏の高校野球が中止になったことに触れ「(高校球児は)悔しかったと思います」。同じアスリートとして選手権の開催を祈りつつ、残りの時間を全力で過ごす。(つづく)【南谷竜則】