Jリーグは6月27日のJ2再開とJ3開幕、7月4日のJ1再開を発表しました。約4カ月ぶりに迎えるその時を前に、日刊スポーツでは歴代のJリーグの選手、監督、関係者から生まれた言葉をピックアップ。あの日、あのときの印象的なシーンを振り返ります。

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「オレは実は179センチなんです」。

GK川口能活は、日本代表としてW杯に4度出場した。98年フランス大会181センチ、02年日韓大会と06年ドイツ大会は179センチ、10年南アフリカ大会は180センチ。アニメONE PEACEの主人公ルフィのように、彼の身長は伸びたり縮んだりしている。結局J3相模原で18年シーズンを最後に現役を終える際には、180センチで現場を離れた。

川口は名門・清水商から鳴り物入りで94年に横浜に加入した。GKとしては小柄だが、瞬発力にたけた努力家で、ユース年代の実績も十分、なにより甘いマスクでスター性があって多くのクラブが獲得を目指した。彼は当時日本代表GK松永成立がいた、横浜を選んだ。「松永さんを超えないと日本代表になれないから」(川口)が、クラブ選びの決め手となった。結局、1年目は出番がなく、2年目からレギュラーとなり、4年目に代表のユニホームにたどり着いた。

とある日、クラブ練習後にシャワーを浴びた川口は報道陣の前に寄ってきて「伝えたいことがあるんです」と切り出した。「実は僕の身長は179センチなんです」。突然の告白。サッカー選手は自分を大きく見せたい、少しでも好条件の移籍オファーを受けるため、などの理由で身長や体重に少し色を付けることがある。本人の意思が反映されることもあるし、クラブが手を加えることもある。

「クラブには伝えてるんですが…(なかなか訂正してくれない)。そのうち直してくれると思います」。「なぜ、いまさら?」の疑問に、彼は「正々堂々と勝負したいんです。僕みたいな小柄なGKも努力すれば成功できることを示したいんです」。その後、川口はプレミア・ポーツマスなど、大型選手が多い欧州で4年間プレーした。

4度のW杯出場、アトランタ五輪ではマイアミの奇跡の立役者になった。180センチにも満たない小柄なGKが、日本を代表する守護神として歴史に名を刻んだ。