カズダンスをJ1で再び-。7月4日にJ1が再開する。注目はプロ35年目を迎えた横浜FCのFWカズ(三浦知良、53)。ワールドカップ(W杯)が遠かった時代、サッカーを国民的スポーツに押し上げたレジェンドの偉業を、全サッカーファンが待ち望んでいる。

日刊スポーツの歴代の担当記者が思い出のゴールについて語ります。

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試合を見て記者席から思わず立ち上がったのはあの1回だけだ。11年3月29日、東日本大震災からわずか18日後、神戸での復興支援チャリティーマッチ。Jリーグ選抜の一員として日本代表との試合に途中出場。両軍ゴール裏から「カズ!」コールが飛ぶ大いなる期待を背負い、後半37分だった。

DF闘莉王の競ったこぼれ球に抜け出し、GKより一瞬早く右足を合わせた。ゆっくりゴールに吸い込まれるボールの行方を見て、震えて立ち上がっていた。

喪章をつけて初めて踊る代名詞のカズダンス、そしてそのまま天に祈る姿。「僕にできることがあれば何でもする」。震災翌日の12日早朝、横浜市内の練習場でそう語った。

未曽有の大災害で不安、絶望が満ちる日本列島で、サッカー界の顔として何ができるのか。使命感をゴールという結果で体現し、踊った。「みんながついている。日本全体、世界全体、全員で危機を乗り越えましょう」。試合後の呼び掛けに、日本中が勇気づけられた。

【阿部健吾】(11年担当)