ヴィッセル神戸が、後半ロスタイムの得点でドローに持ち込んだ。これで今季のJ1リーグ戦全34試合のうち、半分の17試合を終えて4勝8分け5敗の11位(暫定)で折り返すことになった。首位川崎フロンターレと神戸の勝ち点は21差。この時点で1試合消化が少ない川崎Fの背中は、事実上見えなくなった。

試合後のトルステン・フィンク監督(52)は「現実的には、リーグ優勝ないと思っているので、できるだけいい順位で終わり、クラブが希望している若手のレベルアップを目指したい」と、異例の終戦宣言をした。

神戸以下の順位にいるクラブで、そこまで正直にコメントしている監督はいないはずだが、ドイツ人監督は11月に再開されるACLの優勝と、それに向けて若手ら戦力の拡充にかじを切ることを明確にした形だ。

さらに11日の練習後の会見でコメントしていた、ACLの2度にわたる日程変更と、それにともなうJリーグへの不満を、再びこの会見で口にした。

「今季はおかしな(J1)リーグ戦になっている。この時点で神戸と川崎Fは2度対戦しているし、これは普通ではない。川崎Fと2度戦うのと、他と2度戦うのでは結果も違ってくる」

最初は8月26日に2-2で引き分けて、2度目はACLの再開が10月に決まったことで、その期間に予定されていたJ1の日程を前倒しで9月9日に行うことになり、2-3で痛恨の逆転負け。

その10月のACLも先日、11月への再延期が決まったばかり。何のための前倒し対決だったのか、やり場のない怒りもあったのだろう。クラブも合意した日程変更だったとはいえ、現場を預かる責任者として、言わずにはいられなかったと想像できる。

さらにルヴァン杯準々決勝で、神戸は9月2日に川崎Fと対戦して0-6の歴史的惨敗。これに関しては組み合わせ抽選によるものだったが、3週連続水曜日に首位独走チームと対戦し、1分け2敗で勝負のリズムまで崩してしまうとは、確かにアンラッキーな部分もあった。

だが、これで神戸も思い切った戦いができるようになる。この日、故障から6試合ぶりに復帰した36歳のMFイニエスタを無理に使う必要はなくなった。1勤1休で十分だし、同じ位置でこの日、J1初ゴールを決めた21歳のMF安井を併用していけばいい。

34歳のDFフェルマーレンも同じで、23歳のDF菊池や22歳のDF山川を積極起用すればいい。第2GKを育てる意味でも、今季まだ3試合しか出番のない26歳前川を使えばいい。従来の神戸は結果重視で、短いスパンでの監督交代が多かったが、フィンク監督には昨季の天皇杯優勝という“貯金”がある。これからが腕の見せどころだ。

「今後はACLもあって難しい試合が詰まっているので(現在故障で離脱中の)DF大崎、FWドウグラスが戻ってくればプラスになる。今日はMF郷家が戻ってきたし、大きな戦力になる彼らに期待したい」

新型コロナウイルスで異例中の異例のシーズンは、まだ3カ月以上も残っている。クラブ最大の目標であるアジアNO・1の座へ、神戸の大胆な戦いに期待したい。【横田和幸】