8月23日に現役引退したサッカー元日本代表DFの内田篤人氏(32)が14日、千葉県内にある「高円宮記念JFA夢フィールド」で同日から行われたU-19(19歳以下)日本代表候補合宿で指導者デビューを果たした。同代表の影山雅永監督(53)や選手らは練習後のオンライン取材で“内田コーチ効果”を次々と語った。

この日は午前、午後の2部練習を実施し、内田氏は日本サッカー協会が新設したロールモデルコーチとして参加した。パス回しなどの練習では選手に混ざり、現役時代さながらの軽快なプレーも披露。自身と同じ右サイドバックを主戦場とする選手には身ぶり手ぶりで個別指導を行い、居残り練習ではロングキックの蹴り方なども伝授した。

影山監督は「すんなりと入ってもらってありがたいなと思います」と笑顔で振り返り「言ってみたら日本人の中でトップの経験をしてきた選手。今の選手に将来どうなりたいかと聞くと必ず『欧州でプレーしたい』と言います。近くにいて、いろんなことが聞けるというのはこの上ない環境だと思います」と話した。

午後練習前に行った全体ミーティングでは、内田コーチが選手へ向けて約4分間、午前練習の感想などを語ったという。FW櫻川ソロモン(19=千葉)は「厳しい口調ではないんですが、『まだまだ足りない』と。経験ある選手から言われたので、説得力もあるし、そこでチームの雰囲気が変わった」と話した。先月まで内田とチームメートでもあったMF松村優太(19=鹿島)も「経験してきたものが違うので、内田さんの言葉には重みがある。そういう方がコーチとして教えてくれているのはありがたいことだと思います」と気を引き締めた。

内田コーチからのハッパもあり、午後練習では球際の寄せに激しさが増すなど選手らの動きにも変化が見られた。影山監督も「彼が言えば練習がスッと締まるというか。非常にいいトレーニングができたと思います」とうなずいた。

同代表が目指すのは、その内田コーチも07年に出場経験のある来年開催予定のU-20W杯の舞台。新型コロナウイルスの影響で同大会出場権をかけて戦うU-19アジア選手権ウズベキスタン大会は今年10月から21年初旬へ延期された。U-19日本代表も8月1日から実施した強化合宿初日に行った検査で選手1人が陽性反応を示し、合宿自体が中止に。調整に苦労している中で迎えた今回の合宿だった。

今回も約1時間で結果が出る「スマートアンプ法」での検査を行い、選手全員が無事に陰性に。影山監督は「久々に集まって同年代で競い合う、もう1度予選にむけてチームを作っていこうぜという思いを選手が持っているのが、たくましいなと思いました」と思いを語った。大会まで時間ができたことでメンバー選考の練り直しも示唆し「この年代はどんどん変わる。他国も条件は同じだが、粛々と準備をしていくだけ。こういうときに適応力が問われてるんだなと思います」と意気込んだ。【松尾幸之介】