元なでしこジャパンのFW永里優季(33)が歴史的一歩を刻んだ。

先月加入した神奈川県2部の社会人チーム「はやぶさイレブン」の一員として18日、神奈川県内で行われた第3節山王FC戦の後半41分から途中出場。日本協会の第1種(一般・大学)に登録された女子プロ選手として初の公式戦出場となった。同ロスタイムには自身のパスから実兄のFW永里源気(34)の得点も演出。男子選手と対等にプレーし、3-1の勝利に貢献した。

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ついに永里が男子チームデビューを果たした。2-1でリードした試合終盤の後半41分。接戦の中で、3人目の交代選手として呼ばれた。真新しい背番号17のシャツに着替え、2トップの一角へ。前線でボールを受けてスルーパスでチャンスを作ると、味方から「優季さんナイスボール!」と声が飛んだ。

その後もダイレクトパスなどで攻撃のリズムを作り、最大の見せ場は後半ロスタイム。ピッチ右で2トップを組むFW林純平にボールを落とすと、林が左サイドの実兄の永里源気へラストパス。ゴール右へ流し込んだ。「お兄ちゃんはなかなか決め切れていなかったので、決めてくれてよかった」。妹から兄への初めてのお膳立て。決定的な3点目にもなり、チームは開幕3連勝。「私が入ったあとに点が入ってよかった。マイナスにはならなかったかな」。約8分間の出場ではあるが、夢の1歩を踏みだし、自然と笑みもこぼれた。

移籍期間の関係で開幕から2試合は出場できず、この日が初めてのベンチ入り。10月4日には同2部のFCグラシア相模原との練習試合で後半途中から約15分間出場。実戦デビューは果たしたが、当時はまだ7月に負傷した左膝の痛みがあり、途中からは膝をかばいながらのプレーになっていた。しかし、この日はボールを1タッチで落として何度もゴール前へ走り込み、味方のクロスには相手と競りながら精いっぱいジャンプしてシュートを狙うなど、男子相手にもストライカーとしての脅威を感じさせていた。

日本でのプレーは日テレに所属していた09年シーズン以来、約10年ぶり。男子とプレーする上での課題には切り替えのスピードを挙げつつ「ボールを引き出す動きやセカンドボールの予測は通用すると感じました」と自信も口にした。リーグ戦は残り3試合。今後はFWとして、女子選手初の得点も期待される。【松尾幸之介】

◆永里優季(ながさと・ゆうき)1987年(昭62)7月15日、神奈川県厚木市生まれ。地元クラブから日テレの下部組織に所属し、中学2年時には日テレにも飛び級で参加。10年1月にドイツのポツダムへ移籍し、同年の欧州女子CL優勝も経験。以降はイングランドのチェルシーなどを渡り歩き、17年にシカゴ・レッドスターズに加入。日本代表は04年に初選出され、その後はエースFWとして活躍。11年W杯優勝など、なでしこジャパンの黄金期を支えた。国際Aマッチ132試合58得点。168センチ。